<< 2009年03月
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

坂出事件、高松地裁判決① ニュース記事に関連したブログ

2009/03/17 05:19

 

今回のエントリの内容は、予定を変更して。

 


 日付が変わり、すでに昨日のことになってしまいましたが、16日、高松地裁で香川県坂出市の3人殺害事件の判決公判が開かれました。一昨年の11月、三浦啓子さん(当時58歳)と孫の山下茜ちゃん(当時5歳)、彩菜ちゃん(当時3歳)が殺害された事件です。
 当初は大量の血痕を残して3人が忽然と姿を消したミステリアスな行方不明事件として報じられ、その後、親族である川崎政則被告(63)の死体遺棄容疑での逮捕と殺害の自供、遺体の発見-という経過を経たので、記憶に残っている方も多いかと思います。遺族に対する犯人視報道が一部にあったことも。

 


 あらかじめお断りしておくと、フクトミ、この事件に関してはまったく取材に携わっておりません。判決公判にだけは応援のため出張に行く話もあったのですが、結局は大阪本社で原稿を処理するアンカー役を務めただけです。
 ただ、相応に関心の高い事件であるし、弊紙を含め全国紙はどこも朝刊に判決要旨を掲載していないため、それだけでもアップしておいた方がよいかと思った次第です。

 

 あ、あとイザ!にもMSN産経にもネット速報用の短い判決原稿しかアップされていないので、紙面(大阪本社発行版)に掲載した原稿も転載しておきます。

 

 例によって判決要旨は裁判所提供のものをほぼそのまんまなので、字数制限の関係上2分割でお送りします。
 では、どうぞ。

 

 

 


祖母ら3人殺害 死刑
  高松地裁判決 結審から4日後

 

 香川県坂出市で平成19年11月、パート従業員の三浦啓子さん=当時(58)=と孫姉妹の計3人が殺害された事件で、殺人や死体遺棄などの罪に問われた三浦さんの義弟の無職、川崎政則被告(63)の判決公判が16日、高松地裁で開かれた。菊池則明裁判長は「被告には小さく弱いものに対する情といった人間性のかけらも見いだせない。刑事責任は重大で死刑を選択する以外にない」として求刑通り死刑を言い渡した。弁護側は即日控訴した。
 5月に始まる裁判員制度を見据え、地裁は争点を整理する期日間整理手続きを適用したうえで今月9日から4日連続で公判を開廷。結審から4日後のスピード判決となった。
 公判では被告の刑事責任能力の程度が最大の争点。判決理由で菊池裁判長は「事前に遺体を埋める穴を掘るなど周到かつ綿密な準備をしており、犯行隠蔽行為も行った」と指摘。被告が犯行時まで通常の社会生活を送っていることや、医師2人による精神鑑定結果ともあわせて完全責任能力があったと認定し、「知的能力が低く心神耗弱状態だった」とする弁護側の主張を退けた。
 そのうえで死刑適用の是非について検討。動機について「病死した妻が姉である三浦さんに多額の借金を背負わされたと考え、殺害を決意した。発覚を防ぐために泣き騒ぐ姉妹も殺害しており、酌量の余地はまったくない」と指弾した。さらに犯行態様の残虐さや計画性の高さ、遺族の処罰感情の厳しさにも触れ、極刑が相当と結論づけた。
 判決によると、川崎被告は19年11月16日未明、自宅で就寝中だった三浦さんと孫の山下茜ちゃん=同(5)、彩菜ちゃん=同(3)=を相次いで包丁で刺して殺害。遺体を坂出港にある資材置き場に埋めた。

 



父「やっと報告できる」
 祖母孫3人殺害に死刑判決 「娘の成長楽しみだった」

 

 望み続けた極刑にも、笑顔はもちろん安堵の表情はなかった。祖母と幼い孫姉妹の命が奪われてから1年4カ月。香川県坂出市の3人殺害事件で16日、死刑が宣告された。「やっと、ばあちゃんと子供らに報告できる」。判決後に記者会見した姉妹の父、山下清さん(44)は時折涙を浮かべながら、ゆっくりと言葉を選ぶように胸の内を語った。一方、川崎政則被告(63)は死刑を言い渡されても、背筋を伸ばしたままだった。
 高松地裁1号法廷。傍聴席の2列目に座った山下さんは固く目を閉じ、午後4時の開廷を待った。隣には3人の遺影を胸に抱えた妻、佐智子さん(35)。赤い上着に白っぽいズボン姿で入廷した川崎被告は、傍聴席に向かって手を合わせ一礼した。
 開廷直後、菊池則明裁判長が判決主文の朗読を後回しにすることを告げる。目を閉じたまま、額の前で両手を組んで判決に聞き入る山下さん。「被告人を死刑に処する」。主文言い渡しの瞬間、佐智子さんが泣き崩れると、そっと肩に手をやった。川崎被告は手を体の側面に真っすぐ伸ばして姿勢を正し、微動だにせず正面を見据えた。最後に裁判長から控訴手続きについて説明を受けると、かすかにうなずき、最後に頭を下げた。
 「やっと、ばあちゃんと子供らに報告できる。『死刑が言い渡されて、よかったのう。悪いことをした人間は、きちっと罰せられる』と報告します」
 閉廷後に高松市内のホテルで行われた会見で、山下さんは心境をこう説明した。「家を出る前から信じていた」という極刑判決にも険しい表情を崩さず、終始うつむいたまま。「みんなが死んで、どれだけ悲しかったか。(周囲が)分かってくれなかったのが、つらかった」と絞り出すように言葉が続く。川崎被告については「罪の重さを感じてもらいたい」と話した。
 「娘らの成長を、ずっと楽しみにしていた。成長を見ていけないのが悔しい」。次女の彩菜ちゃん=当時(3)=の先月の「5歳」の誕生日には、洋服と下着のパンツを供えた。当時はまだおむつを着けていたが、もうパンツが必要だと夫婦で選んだ。長女の茜ちゃん=同(5)=は、この春から小学校に通うはずだった。

 

 



☆☆ 判 決 要 旨 ☆☆
【主文】
 被告人を死刑に処する。押収してある包丁1本を没収する。
【理由】
■罪となるべき事実
 被告人は

 

  第1 かねてから恨みを抱いていた三浦啓子(当時58歳)を殺害しようと企て、平成19年11月16日午前3時45分ごろ、香川県坂出市内の同女の居宅に無施錠の玄関からひそかに侵入した上、そのころ、同所において、
   1 ベッドで就寝していた同女に対し、その頸部を両手で絞めつけようとし、目を覚まして抵抗した同女の前胸部等を所携の包丁(刃体の長さ約17.2センチ)で多数回突き刺し、よって同女を心臓刺創による出血により死亡させて殺害し
   2 たまたま上記三浦方に泊まりに来ていた同女の孫の山下茜(当時5歳)を殺害しようと決意し、同女に対し、その前胸部等を上記包丁で多数回突き刺し、よって同女を上行大動脈・左肺動脈切損および心臓刺創による出血により死亡させて殺害し
   3 上記2と同様に上記三浦の孫の山下彩菜(当時3歳)を殺害しようと決意し、同女に対し、その前胸部等を上記包丁で多数回突き刺し、よって同女を左心室切損による出血により死亡させて殺害し
  第2 上記第1記載の日時ごろから同月18日午後10時ごろまでの間、上記三浦宅から上記殺害した3名の遺体を運び出して普通乗用自動車に乗せ、同市江尻新開の空き地に運搬して、順次土中に埋め、もってこれらを遺棄し
  第3 業務その他正当な理由がないのに、上記第1記載の日時場所において、上記第1記載の包丁1本を携帯し

 

たものである。
■事実認定の補足説明
▽第1 争点
 判示第1の2および3の各事実に関し、被告人に茜および彩菜に対する殺意が生じた時期
▽第2 当裁判所の判断
(1)当事者の主張
 被告人が平成19年11月16日午前3時45分ごろ、かねてから恨みを抱いていた三浦啓子を殺害するため三浦方に侵入したことは争いがないところ、検察官は論告において、被告人に茜および彩菜に対する殺意が生じたのは、茜および彩菜が三浦と一緒に寝ているのを発見したにもかかわらず、三浦殺害を思いとどまらずに殺害を決意したときである旨主張する。これに対し、弁護人は弁論において、被告人に茜および彩菜に対する殺意が生じたのは、三浦を殺害した後、茜および彩菜が目を覚まして、泣きながらそばにやってきたときである旨主張する。
(2)検討
 この点、被告人は公判廷において、三浦方の寝室に侵入し、まさに三浦の首に手をかけようとしたとき、茜および彩菜が隣に寝ているのに気づいたが、目の前の三浦を殺害することしか考えられなかった、三浦殺害後、茜および彩菜が目を覚まし、泣きながらそばに来たので、騒がれて近所に気づかれるととっさに考え、両名の殺害を決意した旨供述している。この被告人の公判供述は具体的で迫真性に富んでおり、その供述態度からもことさら虚偽の話をしようとする様子はうかがえない。
 他方で、被告人は捜査段階において、三浦を殺害する前に、茜および彩菜を発見した際、「孫娘がいようが関係ないわ」「できれば子供は殺したくはないけれども、目を覚ましたらそんときは仕方がない、3人をまとめて殺してまえ」と考えた旨供述している。しかしながら、今まさに三浦を殺そうとしている被告人が、目を覚ましたら茜および彩菜を殺してしまおうと瞬時に冷静に考えたというのは、被告人の知的能力が低いことにかんがみると、やや不自然というべきである。
 またこの供述調書の末尾には、被告人が申し立てた訂正の内容として、「『孫娘がいようが関係ないわ』とありますが、これは、単に孫娘がいてもいなくても、そのとき啓子さんを殺すしかない、とにかく啓子さんを殺してやろうと思っただけのことですので、悪い意味にとらないでほしいと思います」と記載されており、これは、茜および彩菜を発見したときに殺意を生じたわけではないと訂正を申し立てたと受け取ることも可能である。
 以上からすれば、茜および彩菜に対する殺意の発生時期については、被告人の捜査段階供述よりも公判供述の方が信用できるというべきである。
 検察官は論告において、①被告人は三浦が起きて抵抗することをあらかじめ想定しており、茜および彩菜が目を覚まして泣き出すことは容易に推測できたはずであること、②現に茜および彩菜が泣き出した際、両名を泣きやませたりするなど他の手段を全く試みず、すかさず両名を殺害していることなどから、被告人に殺意が生じたのは茜および彩菜を発見したときであると主張するが、上記①および②の点は、茜および彩菜が目を覚まして、泣きながら被告人のそばにやってきたときに殺意が生じたとする被告人の上記公判供述と特段矛盾するものではなく、その信用性に影響を及ぼさないと判断した。
(3)結論
 以上から当裁判所は、被告人に茜および彩菜に対する殺意が生じたのは、三浦を殺害した後、茜および彩菜が目を覚まして、泣きながらそばにやってきたときであると判断した。
■弁護人の主張に対する判断
▽第1 弁護人の主張
 弁護人は、被告人が本件各犯行当時、心神耗弱の状態であった旨主張するので、以下、被告人の責任能力について検討する。
▽第2 検討
(1)責任能力判断に必要な鑑定結果以外の諸事情
(ⅰ)本件各犯行の動機
 被告人が三浦を殺害しようとした動機は、被告人の妻が姉である三浦により借金を負わされるなどし、それが原因となって家庭を壊された、三浦が実家の財産を相続することが許せないなどと考え、三浦に対する憎しみを募らせたというものであると認められ、当時の被告人の状況からすれば自然で、それなりに理解できるものである。
 また、被告人が茜および彩菜を殺害しようとした動機について、被告人は三浦を殺害した後、茜および彩菜が目を覚まし、泣きながらそばに来たので、騒がれて近所に気づかれるととっさに考え、両名の殺害を決意した旨供述しているところ、三浦殺害の犯行発覚を防ごうと考えていた被告人の考えとして、了解可能である。
(ⅱ)本件各犯行の準備行為
 被告人は三浦の殺害を決意した後、①犯行が発覚しないよう、深夜、三浦方に忍び込んで寝ている三浦を絞殺しよう、もし目を覚まして抵抗するようなら包丁で突き刺して一気に殺してしまおう、殺害後は三浦の遺体を運び出して失踪したように見せかけようなどと考え、②殺害行為に用いるためのひもや包丁を準備し、包丁については刺すときに手が滑らないように柄に滑り止めの加工をするなどした上、犯行時に顔を見られないようにするための目出し帽、指紋を残さないようにするための軍手、遺体を運び出す際に使うための布テープ、ビニールロープ、ブルーシート、服に返り血が付かないようにするための雨合羽、血が付いたときに履き替えるための運動靴や靴下等を準備した。
 また被告人は、③2度にわたって三浦方を下見し、深夜でも三浦方の玄関には鍵がかかっていないことを確認し、④三浦の遺体を遺棄する場所として、人目につきにくい空き地を選定した上、事前に遺体を埋めるための穴を掘るなどした。さらに被告人は、⑤当時勤務していた会社に迷惑がかからないよう、事前に退職届を提出している。
 以上からすれば、鑑定人の1人が公判廷で指摘するとおり、三浦殺害後の計画についてはあまり考えられていないという面があるものの、被告人は本件各犯行の準備行為を周到かつ綿密に行っているというべきである。
(ⅲ)殺人の各犯行態様
 被告人は上記(ⅱ)の準備行為に基づき、雨合羽を着用し、包丁やブルーシート等を持参して深夜、三浦方に侵入し、目出し帽を着用した上、寝室で就寝中の三浦の首を絞めようとしたが、抵抗されたため、あらかじめ用意していた包丁で三浦の前胸部等を多数回刺して殺害した。その後、目を覚まして泣き出した茜および彩菜に対し、いずれも包丁で前胸部等を多数回刺して殺害した。被告人の各殺害行為の態様は、三浦を殺害し、自己の犯行の発覚を防ぐことを目的とした合目的的なものである。
(ⅳ)殺害後の行動
 関係各証拠によれば、殺害後の被告人の行動として以下の各事実が認められる。
(ア)被告人は3名を殺害した後、壁に付着した血痕を一部ふき取り、血痕が付着したじゅうたんの一部を切り取った上、身元が判明しないよう3名の衣服をはいで、ビニールシートやじゅうたん等にくるんで遺体を運び出した。
(イ)被告人は泥棒が入ったと装うために、たんすや鏡台の引出を開け、三浦が失踪したと装うために、三浦の自転車、携帯電話および靴を持ち去った。そして被告人は、3名の遺体を自車に載せ、現場を立ち去った。その際、被告人はほうきを使ってタイヤ痕や足跡、遺体を引きずった跡などを掃いて消した。
(ウ)その後、被告人は坂出市江尻町の空き地に移動し、三浦の自転車を海中に投棄し、あらかじめ掘っておいた穴に三浦の遺体を埋めたが、夜明けが近くなったため発見されるのを恐れて、茜および彩菜の遺体や衣服等を隠して、その場を離れた。
(エ)自宅に戻った被告人は、自車の内部に付着した血痕を丁寧にふいた上、タイヤ痕から犯行が発覚するのを恐れ、自車のタイヤを交換した。
(オ)その2日後、被告人は三浦の遺体を遺棄した場所の隣に穴を掘って、茜および彩菜の遺体や衣服等を埋めた。その際、被告人は三浦の遺体が野良犬により掘り返されることを防ぐため、いったん埋めた穴を掘り返し、三浦の遺体の上に木材を置いて再度埋めた。また、携帯電話から場所が探索されることを恐れて、三浦の携帯電話を海中に投棄し、犯行に用いた包丁を墓地に隠した。
(カ)殺害の翌日および翌々日、警察官が被告人方に聞き込みに来た際、被告人は警察官に対し、「事件のことは何ちゃ知りません」などと答えた。その後、被告人は警察から逃れるため転居することとし、勤務先を予定より早く退職した上、長男に対し、警察官から事件当日のことについて聞かれたら、被告人は一日中家にいたと言うように口裏合わせを指示して、自宅を出て転居した。
 これらの行動は明らかな犯行隠蔽行為であり、被告人は若干稚拙な面があることは否めないものの、犯行の発覚を防ぐために現実的かつ合理的な行動をとっているというべきである。
(ⅴ)本件各犯行以前の行動
 被告人は中学校を卒業後、ダンボール関連の会社に約28年間勤務し、その後3度の転職を繰り返し、本件犯行当時は、約7年前から食品関連会社に勤務していた。その間、会社等で特段の問題をおこすことはなかった。また、被告人は昭和52年に妻と結婚し、2人の子をもうけて養育してきた。
 これらからすれば、被告人は通常の社会生活を送ってきたと認められる。
(2)被告人の精神鑑定
(ⅰ)当裁判所は弁護人からの請求に基づき、被告人の精神鑑定を実施することとし、①犯行時の被告人の知能の程度、②犯行時の被告人の精神障害(特異的言語発達遅滞その他の精神障害)の有無・程度、③被告人の知能の程度および精神障害が犯行へ与えた影響の有無・程度、について精神医学の見地から推認できる事実を鑑定事項とし、検察官が推薦する医師および弁護人が推薦する医師を鑑定人として採用して、それぞれ独立の立場で鑑定を行うよう命じた。
(ⅱ)2人の鑑定はともに鑑定事項①に関し、被告人の知能は正常下限あるいは健常者と軽度精神遅滞者の境界領域である、鑑定事項②に関し、被告人には統合失調症等の狭義の精神障害は認められない、鑑定事項③に関し、被告人の知能の程度および精神障害が犯行に著しい影響を及ぼしたと推認する精神医学的根拠は認められない、と結論づけている。
 両鑑定人はいずれもその学識および経験に照らして、精神鑑定の鑑定人として十分な資質を備えている上、両鑑定において採用されている諸検査を含む診察方法や前提資料等の鑑定条件に特段問題はない。また、各鑑定書や公判廷において説明された結論を導く過程についても、精神医学的知見に基づき、合理的で納得のできるものである。
 なお、検察官推薦の鑑定人は、被告人には1度決めたら計画を「転換することが困難であること」や、「関心や他者の気持ちの理解などが稚拙であること」などの認知特性が認められ、これは特定不能の広汎性発達障害に基づくものと考えることも可能であり、これが本件各犯行における被告人の行動に影響を与えた可能性があることを指摘している。しかしながら検察官推薦の鑑定人は、被告人が特定不能の広汎性発達障害を有するかどうかについては確定的な診断が困難である上、仮にそのような障害を有していたとしても、被告人が犯行時61歳まで破綻することなく社会生活を営むことができていたことにかんがみ、そのことが本件各犯行における被告人の行動に与えた影響は著しいものでないとしている。したがって検察官推薦の鑑定人による鑑定も、弁護人推薦の鑑定人による鑑定の結論と矛盾しないものといえる。
 また、弁護人推薦の鑑定人による鑑定は、本件各犯行時における被告人の行動能力は知的水準の低下のためにある程度の障害を被っていた可能性は否定できないとするものの、著しくない程度にとどまっていたものとしている。さらに両鑑定の内容は、捜査段階での医師による診断とも結論において一致する。
 以上からすれば、両鑑定はいずれも高い信用性を備えているというべきである。
(3)責任能力の判断
(ⅰ)以上のように、被告人が本件各犯行に及んだ動機は了解可能なものであり、あらかじめ計画を立て、周到かつ綿密な準備を行っている上、殺害の各犯行態様も、三浦を殺害し、自己の犯行の発覚を防ぐことを目的とした合目的的なものと認められ、殺害後は、現実的かつ合理的な犯行隠蔽行為をしている。また、被告人の精神鑑定を行った両鑑定人の鑑定内容には高い信用性が認められ、その鑑定結果を採用し得ない合理的な事情も認められない。さらに、被告人は61歳(犯行時)に至るまで通常の社会生活を送ってきたと認められる。
 これらを併せ考えると、本件各犯行当時、被告人は知能の程度が健常者と軽度精神遅滞者の境界領域に位置していたもの、これが被告人の行動に著しい影響を及ぼしたことはなく、完全責任能力を有していたと認められる。
(ⅱ)弁護人は、①被告人の知的能力が低いこと、②被告人には特定不能の広汎性発達障害がある可能性があると検察官推薦の鑑定人が指摘していることから、被告人は本件各犯行当時、悪いことが分かっていても行動を制御することが著しく困難であった、特に茜および彩菜が三浦のそばで寝ているのに、思考と行動の修正が困難である認知特性によって三浦殺害を思いとどまることができず、2人をも巻き添えにして殺害してしまったと主張する。
 しかし前述のとおり、検察官推薦の鑑定人は、特定不能の広汎性発達障害と診断するためには5歳以前の診断が必要であるところ、被告人の場合、5歳以前に診断がなされていないことから、被告人が特定不能の広汎性発達障害であると診断することはできず、その可能性があると認められるにとどまる上、仮に被告人が特定不能の広汎性発達障害を有していたとしても、これまで破綻することなく社会生活を営むことができていることから、そのことが本件各犯行における被告人の行動に与えた影響は著しいものではないとしている。この推論過程に不合理な点はなく、弁護人主張のとおり、仮に被告人が特定不能の広汎性発達障害だとしても、心神耗弱の状態であったとは到底いえないというべきである。
 以上からすれば、弁護人の上記主張は採用することができない。

 


 

 

 

 このエントリではここまで。では続きは次のエントリで。

 

 

 

 

カテゴリ: 事件です  > 裁判    フォルダ: 指定なし

コメント(0)  |  トラックバック(0)

 
 
関連ニュース
 
このブログエントリのトラックバック用URL:

http://fukutomim.iza.ne.jp/blog/trackback/955222

トラックバック(0)