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坂出事件、高松地裁判決② ニュース記事に関連したブログ

2009/03/17 05:27

 

香川県坂出市の3人殺害事件の判決についてのエントリ、後半です。
判決理由はいよいよ佳境の量刑理由に移ります。

 

 



■量刑の理由
 本件は、被告人が被害者である義姉に対し、亡妻に多大な金銭的被害を与え自分の家庭を崩壊させた、義姉がその実家の財産を継ぐのは許せない、などと恨みを募らせ、包丁を持参して深夜、被害者の自宅に押し入り、義姉を包丁で刺し殺した上、隣で寝ていた女児2名が起き出して泣き叫ぶや、自己の犯行発覚を防ぐためその2名を次々と包丁で刺し殺し、3名の遺体を車で運んで空き地に埋めて遺棄したという住居侵入、殺人、死体遺棄、銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。
 当裁判所は量刑に当たり、次の諸事情を考慮した。
▽第1 被告人に不利な事情
(1)本件各犯行に至る動機
 被告人は、妻がその姉である三浦により多額の借金を背負わされるなどしたために家庭を壊された、そのような三浦が実家の財産を相続することは絶対に許せないなどと考え、三浦に対する憎しみを募らせ、その殺害を決意したものである。
 証拠上、被告人の妻が三浦に対して貸した金や三浦のため消費者金融機関から借りた金について記されたという紙片の存在が認められ、さらに、被告人の家の貯金も無くなっており、妻の死後、被告人の保険契約の解約返戻金も借金により相殺されてしまっている。こうしたことから、被告人が三浦によりそのような金銭的な迷惑をかけられたと思いこんだことは認められるものの、果たして被告人が思いこんだとおりであったのかは必ずしも判然としない。また、三浦の実家の財産の帰趨などは、いまだ三浦および被告人の妻の両親が健在であって定まっておらず、その両親の意向などを被告人が確かめたわけでもなかったのである。いずれにせよ、このような事情がいやしくも人一人の殺害を決意させるほどの事情とは到底思われない。
 また、被告人は三浦を殺害した後、茜および彩菜が目を覚まし、泣きながらそばに来たことから、騒がれて近所に気づかれるととっさに考え、自己の犯行発覚を防ごうと両名を殺害したものである。
 三浦殺害後、幼い子供たちが泣き叫ぶ姿を見て、憐憫の情を催すどころか、自己の犯行発覚を防ごうと凶行を重ねたことは、誠に身勝手といわなければならない。
 その上で、被告人は3名が失踪したと見せかけるために、殺害した3名の遺体を遺棄したものである。
 このように、被告人が本件各犯行に及んだ動機は、極めて身勝手かつ自己中心的なものであって、酌量の余地は全くないといわなければならない。
(2)本件各犯行に至る経緯および本件各犯行態様
 被告人は深夜、三浦方に侵入して、寝ている三浦を絞殺あるいは刺殺し、遺体を運び出して失踪に見せかけるという計画を立て、凶器や犯行の際に用いる道具類を準備し、2度にわたって三浦方を下見した上、あらかじめ三浦の遺体を埋めるための穴を掘るなどして、本件各犯行に及んでいる。三浦殺害は周到かつ綿密な準備行為に基づいて敢行された、計画的な犯行であるというべきである。
 本件の各犯行態様をみると、被告人は上記計画に基づき、凶器や道具類を持参した上、深夜、三浦方に侵入し、就寝中の三浦の首を絞めて殺害しようとしたが、三浦が目を覚まして抵抗したため、準備していた包丁で三浦の前胸部等を多数回強く突き刺して殺害している。包丁は刃体の長さが約17.2センチあり、その刃体先端が鋭く尖り、柄にはあらかじめ滑り止めのゴムを巻いてあった。被告人はこの包丁により、三浦の胸腹部に7カ所の刺創(そのうち左心耳と左肺静脈を損傷したものが致命傷と考えられる)、左上腕部に2カ所の貫通刺創を負わせたのである。
 さらに、被告人は目を覚ました茜および彩菜の前胸部等をためらうことなく包丁で多数回強く突き刺し、同女らを次々と絶命させたのである。茜には前胸部に4カ所の刺創、左腕部に1カ所の貫通刺創(そのうち上行大動脈および左肺静脈を切損したもの並びに右心室を貫いたものが致命傷と考えられる)を、彩菜には胸腹部に6カ所の刺創(そのうち左心室の心尖部を切損したものが致命傷と考えられる)を、それぞれ負わせている。自己の犯行を隠すため、躊躇することなく恐怖で泣き叫ぶ罪のない幼い子供たちに攻撃を加えた被告人の行動をみると、被告人には小さく弱いものに対する情といった人間性のかけらも見いだすことはできない。
 また、被告人は犯行の発覚を防ぐため、被害者らの遺体から衣服をはぎ、ひとけのない空き地の土中に埋めて遺棄したものである。
 このように、本件各犯行態様は誠に執拗かつ残虐極まりないというべきである。
(3)結果の重大性および遺族の被害感情
 本件においては、被告人の手によって3名の尊い人命が奪われており、結果は極めて重大である。
 三浦は、昼夜まじめに働きながら、長女夫婦や孫たちとともに、ささやかながらも幸せな生活を送っていた当時58歳の女性であったが、隣に住む孫2人が泊まりに来て、3人でベッドで寝ていたところを突然、被告人の凶行による被害に遭ってしまったのである。その前半生は両親に結婚を反対され、その後は夫と離別し、女手ひとつで3人の子供を育てるなど苦労続きであったようではあるものの、最近では妹である被告人の妻の看病を熱心にし、長い間疎遠であった両親にも受け入れられ、パートの仕事を掛け持ちして長女の家族との交流を楽しみにするなど、ようやくその人生に明るさが見えてきたところであった。三浦が被告人に襲われた際に味わわされた恐怖や突然殺されなければならない理不尽さに対する憤りは察するに余りあり、また、死の間際に、自分のことよりも孫2人の安否を気遣ったであろうその心情に思いを致すとき、その悲壮さに胸がつぶれる思いを禁じ得ない。
 茜(当時5歳)および彩菜(当時3歳)の姉妹は、幼いながらも体の弱い母親の手伝いをしたり、父親に膝枕をしたりするなどかわいい盛りであり、両親をはじめ親族はこの姉妹の成長を楽しみにしていた。茜および彩菜は、その将来に多くの夢、希望を秘めていたのであり、被告人の凶行によりこれらの夢、希望がすべて絶たれてしまったのである。両名の襲われた際の恐怖心や苦痛、幼くしてその人生を閉じざるを得なかった無念さ、そして自分の運命の理不尽さに対してなすすべもない無力感などを思うとき、言葉を失うほかはない。
 そして、被害者3名は生命を奪われてからも、さらに全裸にされて土中に遺棄され、変わり果てた姿で発見されたのである。
 本件のような残虐な犯行により、3名もの愛する家族を失った遺族らの悲嘆、衝撃、憤りの激しさがいかに甚大であるかは言うに及ばず、その悲痛な胸の内は計り知れない。茜および彩菜の父親であり三浦の娘婿である遺族は、公判廷において「3人を返してほしい」「3人が味わった傷みや苦しみをひとつにした刑を望みます」などと述べ、三浦の娘であり茜および彩菜の母親である遺族は、書面による意見陳述で「娘と母は絶対帰ってこない」「あなたが、このように生きているかぎり、私達夫婦は、許す事はない」などと述べている。このように、遺族らの処罰感情は極めて峻烈であり、遺族らが被告人に対して極刑を求めているのも当然である。
(4)殺害後の状況等
 被告人は3名を殺害した後、壁に付着した血痕や、タイヤ痕および足跡等を消した上、三浦の自転車、携帯電話および靴を持ち去るなどして、三浦が失踪したと装うなど、様々な犯行隠蔽工作を行っている。また、事件の2日後、行方の分からない3名の安否を気遣う親族に対し、「そんなに心配せんでええよ」などと平然とうそをつくなどしている。
 さらに、被告人は逮捕当初から現在に至るまで、茜および彩菜に対する謝罪の意は表しているものの、三浦に対しては「なんとも思っていない」などと述べており、一片の謝罪の言葉も聞くことができない。
(5)社会的影響
 本件は、祖母および幼い孫2名がこつ然と姿を消したことから世間の耳目を集め、地域住民、特に年少の子を持つ父母や保育関係者等に深刻な不安を抱かせた上、犯行の残忍さや結果の重大性等から、人々を震撼させたのであって、一般社会に与えた影響も大きいといえる。
▽第2 被告人に有利な事情
(1)被告人は逮捕当初から一貫して本件各事実を認めている
(2)被告人は茜および彩菜に対する謝罪の言葉を述べている上、遺族らに対し謝罪文を送付している。
(3)被告人は本件各犯行の被害弁償金として、遺族らに対し150万円の支払いを申し出ている。
(4)被告人にはこれまでに前科前歴が無く、格別大きな問題を起こすことなく社会生活を送ってきた。
(5)被告人は現在63歳と、老齢の域にさしかかっている。
(6)被告人は知能の程度が低いため、精神的な成熟性が一般人に比して十分ではなく、そのため犯行時の行為制御能力にある程度の障害を被っていたと認められる。そして、知能の問題に伴う境遇、特に長年仕事を続けてきたものの、さほど給料は高くなく、経済的にもつましい生活を送る中で、金銭に執着し、貯金もなくなったばかりか、亡妻が被告人に無断で借金をしていたといった問題にうまく対応しきれなかった点に対しては、同情を覚える面があることは否定できない。
(7)被告人が三浦の隣で茜および彩菜を発見した際に、三浦の殺害を思いとどまらなかった点については、一度決めてしまったら変更が容易にできないという被告人の性格(認知特性)によるものといえるが、これは特定不能の広汎性発達障害が影響している可能性も否定できない。
(8)弁護人は「罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、死刑を持って処断すべきときは、無期刑を科する」と定めた少年法51条1項は、18歳未満の少年は責任能力が発展途上で完全ではなく、刑罰も、成人に対するようには厳しく科せないと考えられたために設けられた規定であり、18歳未満の少年が可塑性に富み、更生の可能性が高いことに着目した規定ではないとの前提の上で、弁護人推薦の鑑定人が公判廷で、社会常識的に見た被告人の精神年齢は15歳程度であると供述していることなどを根拠に、被告人には同項の趣旨および精神を準用あるいは類推適用すべきであると主張する。
 しかしながら同項の立法趣旨は、可塑性に富み、教育可能性の高い少年に対しては、より教育的な処遇が必要、有効であること、人格の未熟さから責任も成人より軽い場合があることなどを考慮して、犯行時18歳に満たない者に対する刑を緩和したものと考えられる。したがって、同項は年齢で一律に区切る趣旨の規定と解され、精神的未熟度を被告人の有利な情状の要素として斟酌するのは格別、実質的に精神的成熟性を判断してそれにより科刑を制限する趣旨のものではないと解すべきである。
 そもそも被告人は、本件各犯行当時61歳であり、それまで約45年間にわたって会社で稼働し、結婚して2人の子供を養育するなど、豊富な社会経験を積んできたものと認められるのであるから、弁護人推薦の鑑定人が社会常識的に見た被告人の精神年齢が15歳程度である(これ自体は、上記のように被告人に有利な情状要素として斟酌すべきである)と診断したという一事をもって、被告人の精神的成熟度を18歳未満の少年と同視することは困難といわなければならない。
 したがって、弁護人の本件被告人について少年法51条1項を準用ないし類推適用すべきとの主張は採用できないというべきである。
▽第3 結論
 以上検討したように、本件の罪質、その動機、経緯、態様、結果の重大性および被害感情、殺害後の状況、社会に与えた影響等にかんがみると、被告人の刑事責任は誠に重大というほかはない。当裁判所は極刑を選択するに当たっては最大限慎重な態度で臨むべきであると考え、弁護人の極刑回避の意見に耳を傾け、上記被告人に有利な一切の事情を最大限考慮して検討したが、なお、被告人に対しては、これまで述べたようなその刑事責任の重大性に照らして、死刑を選択する以外にないものと判断した。
 よって、主文のとおり判決する。

 

 


 

 

 

 …いかがでしょうか。

 

 ところで、弊ブログは今回でエントリ100件となりました
 ブログ開設から2年半で、たったの100エントリ。字数制限で分割アップしたことを考えると、実質的には77エントリっす。月に2、3回しかアップしてない計算ですね。とほほ。まあ、字数で数えれば、毎日のように更新されている他の記者ブログともそんなに遜色はないんではないかと自分を慰めておりますが。

 

 とはいえ、細々と続けてこれたのも、アクセスしてくださった皆様のおかげです。ありがとうございます。

 


 さて、もう寝なくては。夜が明けたら、今度は神戸地裁姫路支部の死刑求刑事件判決の原稿と格闘しなければ。

 

 

 

 

 

 

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コメント(2)

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2009/03/17 08:44

Commented by dankichi007-3 さん

TBS朝ズバッ
みのもんた
コメント無し

 
 

2009/03/22 23:22

Commented by なん さん

殺人は、情状酌量の余地がある場合を除いて
全て死刑にすべき、というのがウチの家族の意見です。

近代刑法の思想と、我が家の意見は全く異なっており、
中世的応報刑がウチの考えになっています。

嫁ともども、裁判員になったら面接で落ちそうです。

ちなみに、私は法学部出身なので、
自分が少数派であることは理解しております。
しかし、多数派が必ず正解であるとは限らないことも
歴史が証明する所であります。

前置きが長くなりました (・_・ゞ-☆
今回の事件は、我が家の法廷では死刑判決が出ました。
ではまた。

 
 
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