当分眠り続けるつもりが、目を覚ますはめになってしまいました。
全壊、いや前回(阪神大震災の原稿ばかり書いてると、こんな誤変換が生じるわけです)1月4日付のエントリで〝休眠宣言〟をしてから、1カ月も経たないわけなんですが。なんだかんだで新たなエントリを記すはめになっております。はあ。
3日前の1月27日、フクトミは大阪におりました。大阪本社での研修に、各支局から1人ずつ参加しなければならかったからであります。で、研修を終えて大阪地裁近くのなじみのカレー屋で早めの晩メシでも食うか、と考えていたところに、ケータイが鳴りました。神戸総局のデスクからです。はて。
「明石の議決が出たんだけど」
その言葉を聞いた瞬間、晩メシ抜きを覚悟しました。
「明石の議決」とは平成13年7月に兵庫県明石市の花火大会で起きた事故をめぐる検察審査会の議決のことです。歩道橋上で見物客が折り重なるように倒れ11人が亡くなった事故をめぐっては、主催者である明石市の担当者3人と警備を担当した明石署の地域官、警備会社支社長の計5人が起訴された一方、明石署の署長、副署長は不起訴となりました。そして、これを不服としたご遺族の申し立てに対する議決が出た、というわけです。
しかも、単なる議決ではありません。ご存知の方も多いでしょうが、21年5月に裁判員法とともに改正検察審査会法が施行されました。改正法では、「起訴相当」議決の後に検察官が再び不起訴とした場合は再審査を行い、そこで審査員11人中8人以上が「起訴すべきだ」と判断すれば、強制的に起訴されることになりました。で、今回の議決はその全国初のケースとなったわけです。
そこからは大急ぎで神戸総局に向かって、出稿作業が未明まで続きました。でまあ、なんといっても全国初だし、議決書の要旨をアップしておくか、と考えた次第です。例によって以下の議決書要旨は、犠牲者および申立人であるご遺族のお名前と、やたらと多い読点を一部省いたほかは提供された書面そのまんまです。1万字の字数制限ぎりぎりなので、今回は議決に対する感想、評価は控えます。
では、どうぞ。
☆☆ 議 決 書 要 旨 ☆☆
平成21年神戸第二検察審査会審査事件(起相)第1号
申立書記載罪名 業務上過失致死傷
検察官裁定罪名 業務上過失致死傷
議決年月日 平成22年1月27日
議決書作成年月日 平成22年1月27日
審査申立人
別紙審査申立人目録記載のとおり
審査申立代理人
別紙申立代理人目録記載のとおり
被疑者
(氏名) 榊和晄
不起訴処分をした検察官
(官職氏名)神戸地方検察庁検察官検事 中井隆司
当検察審査会は上記被疑者に対する業務上過失致死傷被疑事件(神戸地検平成21年検第5266号)につき、平成21年9月30日、上記検察官がした再度の不起訴処分の当否に関し、検察審査会法第41条の2第1項により審査を行い、次のとおり議決する。
【議決の趣旨】
別紙犯罪事実につき、起訴すべきである。
【議決の理由】
■1 総論
本件は検察審査会において過去3度に渡り起訴相当の議決がされたが、検察官は4度に渡る再捜査の結果、いずれも嫌疑不十分で不起訴とする判断を維持してきたという経緯がある。
本検察審査会では、検察審査会法改正により、本議決で起訴すべきとの議決がされれば、検察官に更なる捜査を委ねるのではなく、指定弁護士により被疑者を強制的に起訴するという重大な結果が生じる事を真摯に受け止め、検察官及び申立人の各主張、証拠について今一度、慎重に精査、検討し、十分に議論を尽くしてきた。
検察官の基本的立場は被疑者が有罪か無罪かという点にあり、そのような立場も公益の代表者として被疑者に重大な結果を生じる公訴提起を担う以上、理解出来るが、本検察審査会は議論の結果、基本的立場を被疑者が有罪か無罪かという検察官と同様の立場ではなく、市民感覚の視点から、公開の裁判で本件の事実関係及び責任の所在を明らかにして、本件の様な重大な事故の再発防止を望む点に置いている。
そして、本検察審査会は後述するような理由から、本件について被疑者には過失があると判断できるため、起訴すべきであると結論付けた。
■2 本検察審査会における過失の把握及び判断の仕方について
(1)当日の過失に限定しないこと
本件において被疑者に過失があるか否かについては、過去の検察審査会の議決においては警備計画作成段階における過失、本件当日における過失という把握で検討されており、検察官も両過失を別個独立の過失と把握して捜査を行ってきた様である。
本検察審査会においては、上記本件の事実関係、責任の所在等を明らかにするという基本的立場からすると、警備計画作成段階にまで遡らないと本件の事実関係等は理解出来ない事、雑踏警備における事前計画の重要性を重視している事から、被疑者の過失の把握について当日の過失のみに限定することはしない。
そもそも本検察審査会では、本件に関する被疑者以外の警察、明石市、警備会杜担当者の刑事裁判において検察官が当日における注意義務違反のみを訴因とした結果、当日における過失のみが裁判の対象になっている点が理解出来ない。
(2)過失の把握、判断の仕方について、本検察審査会は本件に関する刑事裁判例を参考にすること
本検察審査会は警備計画作成段階の過失と当日の過失を別個独立に考えるのではなく、本件に関する被疑者以外の警察、明石市、警備会社担当者の刑事裁判の判決で判示された過失の把握、判断の仕方を基本に検討をする。
具体的には、
①上記判決が認定した本件事故の原因と発生時刻を前提として、現実の通りに事実が推移しても、遅くともどの時点でどのような措置を執っていれば本件事故を回避できたか、少なくとも被害の規模をかなり小さく出来たのかを検討し、被疑者にとって、ある時点での注意義務違反が認められれば、それより更に前の時点での注意義務違反を問題とするまでもなく、本件事故についての過失責任を肯定する。
②警備計画準備段階の事情については、主として予見可能性の有無の判断に用いるが(予見の程度が大きければ、尽くすべき回避義務の程度も大きくはなる)、過失と評価する以上、被疑者が「現に認識していた」事情だけでなく、容易に認識できた事情も基礎として判断する。
■3 被疑者の過失
(1)予見可能性
被疑者には、
①大蔵海岸公園で夏まつりが初めて行われることから、同会場で同種同規模のイベントに関する雑踏警備の実績がないこと
②夏まつりには10万人を超える参集者が見込まれ、その行事の性質上、幼児を含む年少者や高齢者なども多数参集してくることが予想されたこと
③夏まつり会場である大蔵海岸公園へ向かうにはJR朝霧駅と接続された通称朝霧歩道橋を利用する必要があることから、多数の参集者は歩道橋を利用することが予想されたこと
④歩道橋の構造等からして、歩道橋南端部付近や南側階段において参集者が滞留し、大混雑を生じることが容易に予想されたこと
⑤夏まつりの夜店の配置状況、花火の観覧場所から、歩道橋南端部付近や南側階段において参集者が滞留することが予想されたこと
⑥花火大会の開始、終了時刻は予定されており、花火開始時刻に合わせてJR朝霧駅側から多数の参集者が歩道橋を通って大蔵海岸公園に集まり、花火大会終了前後からはいち早く帰路に着こうとする参集者がJR朝霧駅方面に向かうために歩道橋に殺到し、それによって歩道橋内において双方向に向かう参集者の流れがぶつかり、滞留がいっそう激しくなることが予想されたこと
⑦夏まつりより参集者が少なく年少者や高齢者の参集者も少ないカウントダウン時にも歩道橋内で雑踏事故の発生が危惧されるような状態が生じていたこと
⑧夏まつりに向けての雑踏警備計画は、歩道橋における参集者の滞留による混雑防止の有効な方策はなく、監視体制や混雑が生じた場合の規制方法、各関係機関との連絡体制について具体的な計画は策定されなかったこと
について、認識、認識可能性があった。また当日についても、現場警察官との無線等のやり取りから、遅くとも午後7時には本件事故の発生を予見できており、被疑者に事故発生の危険がより具体化しつつあることを予見させ、一層の警戒心を喚起させるに足りるもの(配下警察官等の出動という方法による措置を講じる必要もある)と認識し、認識し得たと考えざるを得ないのであり、予見可能性はあった。
(2)結果回避義務
主催者側責任者は本件について、①歩道橋の状況についての常時監視義務②雑踏警備の実施状況を常時監視する義務③規制措置を講じる義務が課されているが、被疑者の立場からすれば、主催者側責任者以上に上記各義務を尽くす必要があった。
上記監視義務は、被疑者が警察側の責任者の1人として、署本部の無線、携帯電話、歩道橋周辺についても遠隔操作をして映し出すことができるビデオカメラの映像等の物的設備等から自らの見識の及ぶ範囲、あるいは更に現場の配下警察官に問い合わせて現場の状況を確認するなどして、具体的な規制措置の要否や内容を検討し得るようにするためのものであり、被疑者には監視の結果もたらされた情報に従い、雑踏事故の回避を図るため適時、配下警察官、近畿管区機動隊等の出動による規制措置を執る義務があった。
監視義務の懈怠及び規制措置を実施する義務の懈怠と本件事故の発生の相互の関係をみるに、多数の事故遭遇者、参集者の一致した供述によって認められる歩道橋内の客観的状況としては、午後7時45分に花火の打上げが始まると、歩道橋内からでも花火を見ることができるため、その南側半分程度は参集者の流れは一連の花火が打ち上げられている間はほとんど停滞し、次の一連の花火との間のごくわずかの時間だけわずかずつ南進するにすぎず、参集者が次第に群衆圧力を感じるようになった。このほか、花火開始後も歩道橋の北側からは続々と参集者の流入が続いていたこと、階段からの参集者の流出は階段下の混雑の激化も相まって、逆に鈍化しつつあったことは争いがない。
被疑者はこれらの事実を、歩道橋の状況を厳重に監視していれば遅くとも午後7時50分ころには確実に判明していたと認められる。そして、このような状況が解消されないまま花火終了を迎えれば、歩道橋内又は階段で双方向の群衆の流れが衝突することは不可避の事態であるから、雑踏事故の発生が切迫し、一刻も早く規制を行う必要性があることを極めて容易かつ明確に認識できる。
また被疑者自身も、午後7時56分の時点でビデオカメラの映像を見て滞留しているのを認め、また現場の配下警察官から午後8時の定時報告がされて、現場が混乱していることは容易に想像できるのに、それを漫然と放置した点は争いがない。
したがって被疑者には、遅くとも午後8時頃には、直ちに現場の配下警察官、現場の配下警察官では対処出来ない場合には近畿管区機動隊等の出動による規制措置を執る義務が生じたといえる。
そして、被疑者がこの義務を励行していれば本件事故は回避できたと認められるが、署本部副本部長、総括指揮班指揮官として何ら指示等をせず、漫然と放置したのであり、義務違反行為は明らかである。
この点、被疑者は「歩道橋を渡るのに30分かかった」旨の無線、午後7時26分の配下警察官から地域官に対する「1メートル進むのに5分かかる」との無線は聞こえなかった、ビデオカメラの映像等にしてもアクリル板が曇って内側が見えにくくなったと供述し、検察官もかかる被疑者の供述を信用している。
しかし問題なのは、被疑者が歩道橋、雑踏警備の実施状況について常時監視義務を負いながら、仮に被疑者の供述を信用したとしても、無線の混乱やビデオカメラの映像等では現場の状況がはっきり分からないことを自認しているにも関わらず、それに代わった手法等を用いて現場の状況を把握しないことなのであって、百歩譲って被疑者はこのような規制措置の要否を適切に判断するに足る情報を得ていないとしても、それはその情報の獲得の前提である監視義務を自ら怠った結果なのであるから、被疑者は規制措置を執らなかったことについでも注意義務違反があったという評価を免れない。
(3)本件では信頼の原則が適用されないこと
検察官は現場指揮官である地域官が、いわば雑踏警備のプロであり、署長からも現場の指揮権を委ねられていたことから、明石警察署の警備計画の下でも、地域官が歩道橋周辺に配置された機動隊員等を運用して事故を防止することは十分に可能であったし、当日、巡回していた警察官からは現場指揮官の地域官に対して、歩道橋およびその周辺の混雑に関する情報が伝わっており、指揮権が委ねられた地域官が速やかに部隊を動かして規制を実施していれば十分に事故を防止しうる状況になった旨主張し、被疑者の予見可能性や結果との因果関係を否定する。
しかし、被疑者は供述調書において地域官の評価について、夏まつりの警備計画段階の仕事振りを引用しながら「少し頼りない面があり、報告連絡が遅れる事が多く、時々注意していた」と述べるのであり、夏まつり当日は地域官の現場指揮を全面的に信用していたとの主張は俄に信用出来ない。
夏まつりのような多数の市民の生命、身体、財産の危険が及ぶ可能性がある雑踏警備の現場指揮について高度の信頼を寄せることが許される前提条件を欠いている。
(4)地域官の行動によって因果関係は切断されるかについて
確かに地域官は午後7時55分の部下からの機動隊投入の報告を署本部に伝達しておらず、その伝達があれば、被疑者らが機動隊等を投入して事故を防げた可能性はある。
しかし、複数の者が別々の立場から同一の結果を回避する義務を負う場合において、それらの者の注意義務違反が競合してその結果が生じた場合には、ある行為者以外の者が注意義務を尽くしていれば結果の発生を回避できた場合であっても、当該行為者に注意義務違反がなければ結果が回避されていたと認められる以上、その行為者の過失責任を免れないのであり、被疑者に今まで指摘した注意義務違反がなければ結果が回避されていたことは明らかである以上、地域官の行動によって因果関係は切断されない。
(5)まとめ
以上からして、本検察審査会は被疑者には本件事故について過失があったと判断する。
■4 公訴時効の成立について
本検察審査会においては、被疑者に過失があると判断する以上、公訴時効が成立しているかについても検討をするが、過失犯が競合する場合に公訴時効の停止が認められるのかという事例について先例がない以上、判断に迷う事項ではあったが、結論としては、前回の検察審査会の結論と同様、被疑者と地域官との過失の関係は刑事訴訟法第254条2項の「共犯」に該当すると判断する。
つまり被疑者と地域官とは、階級制度を有する上命下服の警察組織の中で同一署内で直属の上司、部下という関係にあり、被疑者も地域官も夏まつりにおいて市民の生命、身体に危険が及ぶ雑踏事故が起きないようにするという点では共通の使命があり、雑踏事故を防ぐ注意義務という観点からは、同種の注意義務を負っていたといえる。
そして、被疑者が署本部から指揮をする立場であり、地域官が現場において指揮をする立場であるという立場の違いはあるものの、警備計画段階の事情については共通であり、予見可能性を基礎付ける事情も大部分が共通しており、本件事故を防ぐ結果回避義務の終局措置である午後8時10分頃までに機動隊等の警察官に逆流阻止等の指示を出すべき措置は、被疑者にも地域官にも可能な措置であったことからすれば,両者が負っていた注意義務はほぼ同内容といえる。
本検察審査会においても、前回の検察審査会と同様、公訴時効及び時効停止の趣旨を尊重し、被疑者と地域官は立場は違えど実質的には相互利用補充している共犯関係と評価でき、公訴時効の停止における「共犯」といえると判断した。
■5 最後に
本検察審査会は最初に述べたように、被疑者が有罪か無罪かという立場ではなく、市民感覚の視点から、公開の裁判で本件の事実関係及び責任の所在を明らかにする点に重点を置くという基本的立場をとっている。
その基本的立場からすると、検察官の訴因の設定の仕方によって警備計画段階における事情について重点的な審理の対象にされていない点、明石警察署内において具体的に結果回避の措置を執れた者の責任すら追求されていないことは、本件雑踏事故の根本原因を究明することには繋がらないと考える。
被疑者が長年に渡り身分が不安定な状況に置かれたことも十分に考慮したが、二度とこのような悲惨な事故を起こさないためにも、公開の場である裁判において被疑者の過失の有無を明らかにし、その責任の所在を明確にすべきであると考え、前記趣旨のとおり議決する。
(別紙)
【犯罪事実】
■1 被疑者は兵庫県明石警察署に勤務する警察官であり、平成13年7月21日、兵庫県明石市が同市大蔵海岸通1丁目所在の大蔵海岸公園において開催した「第32回明石市民夏まつり」に関し、同署副署長として署本部本部長である同署署長を補佐し、自らは署本部副本部長、総括指揮班指揮官として夏まつりの警備に当たり、雑踏警備計画の企画、立案を掌理し、主催者である明石市、警備会社等への指導・助言、配下警察官を指揮して一般観衆等の安全確保・雑踏事故防止等に関する警備を実施する業務に従事していたものである。
■2 夏まつりに関しては、夏まつり当日(平成13年7月21日のことをいう)に至るまでに雑踏事故発生の原因となり得る以下のような諸事情があった。
(1)夏まつりは従来からの会場を変更して、大蔵海岸公園において初めて行われたものであって、同会場で同種同規模のイベントに関する雑踏警備の実績はなかった。
(2)夏まつりには10万人を超える参集者を見込んでいたが、その行事の性質上、幼児を含む年少者や高齢者なども多数参集してくることが予想された。
(3)夏まつりの会場となった大蔵海岸公園は西日本旅客鉄道株式会社朝霧駅の南方に位置し、同駅とは兵庫県明石市大蔵海岸通1丁目1番先に所在する通称朝霧歩道橋によって接続されており、JR朝霧駅を利用して集まってきた参集者を始め、多くの参集者が歩道橋を通って大蔵海岸公園に参集することが予想された。
(4)歩道橋は全長約103.65メートル、歩行有効幅員約8メートルであって、歩道橋南側は展望に適したテラス兼エレベーターホール(約69.9平方メートル)となっており、歩道橋南端部には約80度に西向きに折れた幅約3.2メートル、長さ約18メートル、48段の階段(途中2か所に踊り場がある)があり、これによって約7.2メートル下の大蔵海岸公園を東西に走る市道大蔵町48号線の南側歩道に接しているが、歩道橋のこのような構造や歩道橋南端部や南側階段は大蔵海岸東側の堤防から打ち上げられる花火の絶好の観覧場所となることから、その南端部付近や南側階段において参集者が滞留し、大混雑を生じることが容易に予想された。
(5)夏まつりにおいては、180余の夜店が歩道橋南側階段下の市道大蔵町48号線の南北歩道上に出店することとなっていたことから、夜店周辺に参集者が密集して人の流れが滞り、また歩道橋南側階段南西側の芝生広場(海峡広場)は花火を観覧するのに絶好の場所であることから、そこに参集者が集まって場所取りなどをすることにより、歩道橋南側階段からの参集者の流出が妨げられ、それらによっても歩道橋南端部付近や南側階段において参集者が滞留することが予想された。
(6)夏まつりの花火大会は同日午後7時45分に開始され、同日午後8時30分に終了することが予定されていたため、花火開始時刻に合わせてJR朝霧駅側から多数の参集者が歩道橋を通って大蔵海岸公園に集まってくること、また花火大会終了前後からはいち早く帰路に着こうとする参集者がJR朝霧駅方面に向かうために歩道橋に殺到すること、それによって歩道橋内において双方向に向かう参集者の流れがぶつかり、滞留がいっそう激しくなることが予想された。
(7)大蔵海岸公園においては、平成12年12月31日から翌平成13年1月1日にかけていわゆるカウントダウン花火大会が行われたが、その際、午前零時のカウントダウン花火大会に向けて参集者が歩道橋に殺到して相当の混雑状態となり、警備員、警察などの協力によって歩道橋北側出入口と歩道橋南側階段下に規制線を張るなどして歩道橋に殺到する参集者の流入を規制、整理することにより、雑踏事故の発生を未然に防ぐことができたものの、雑踏事故の発生が危惧されるような状態が生じていた。
(8)夏まつりに向けて明石市、株式会社ニシカン及び明石警察署において、雑踏警備計画策定に向けた検討が重ねられてきたが、そこでは歩道橋における参集者の滞留による混雑防止のための有効な方策はとられず、また歩道橋の混雑状況をどのように監視するのか、そして混雑してきた場合にどのような規制方法をとるのか、どのような事態になった場合に警察による規制を要請するのか、その場合の主催者側と明石警察署との間の連携体制をどのようにするのかなどといった詳細について、具体的な計画は策定されなかった。
■3 被疑者は夏まつりに至る前に、前記2の(1)乃至(8)記載の各事情を認識し又は容易に認識し得たのであるから、大蔵海岸公園において花火大会に伴う夏まつりを実施した場合には、歩道橋に参集者が殺到して滞留が起こり、雑踏事故が発生する危険があることを予見し、それを未然に防止するために適切な雑踏警備計画が立てられているかどうかを確認した上、本件夏まつり当日、雑踏警備の状況を的確に把握して歩道橋において雑踏事故発生の危険が現実化しそうな場合に適切に対応するため、自ら又は配下警察官をして歩道橋への参集者の流入・滞留状況や雑踏警備の実施状況を常時監視すべきであった。
■4 そして夏まつり当日には、事前に予想きれたとおり、午後6時ころからJR朝霧駅側から多数の参集者が歩道橋に流入し始め、午後7時ころには歩道橋に参集者が滞留し始め、次第に歩道橋の通行が困難な状況になりつつあった上、花火大会開始に向けてますます多くの参集者が歩道橋に流入して滞留し、混雑が進行する状況になっていた。
■5 夏まつり当日のこのような状況下において、被疑者は前記のとおり、自ら又は配下警察官を通じ、歩道橋への参集者の流入・滞留状況や雑踏警備の実施状況を常時監視することはもとより、午後6時30分ころまでには歩道橋に多数の参集者が参集し滞留しつつあることを認め、その後もますます多くの参集者が集まり、特に花火大会終了前後からは歩道橋内において双方向に向かう参集者の流れがぶつかり、滞留がいっそう激しくなることが容易に予想できたのであるから、雑踏事故発生の危険がより具体化しつつあることを予見し、同監視をさらに厳重にして的確に状況を把握した上、遅くとも午後8時ころまでには配下警察官、近畿管区機動隊等に指示して、参集者の迂回路への誘導や分断等により歩道橋への流入規制を実施し、もって雑踏事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があった。
■6 それにもかかわらず、被疑者は上記業務上の注意義務を怠り、雑踏事故が発生することはないものと軽信し、雑踏事故の発生を回避するための前記のような措置をとることなく、漫然放置した過失により、平成13年7月21日午後8時ころから同日午後8時50分ころまでの間、歩道橋において多数の参集者の過密な滞留あるいは大蔵海岸公園へ向かう参集者と同公園からJR朝霧駅方面へ向かう参集者とのもみ合いによる強度の群衆圧力を生ぜしめ、同日午後8時40分ないし50分ころ、多数の参集者を折り重なって転倒させるなどし、
よって、歩道橋において、183名に加療1日間ないし加療251日間を要する頸椎捻挫、胸部圧挫傷等の傷害を負わせるとともに、そのころから同月28日午後6時36分ころまでの間、同歩道橋南端付近ほか1か所において、11名を全身圧迫による呼吸窮迫症候群(圧死)等により死亡するに至らせたものである。



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