多忙極まる年度末がようやく終わったと思ったら。
いやほんとに年が明けて以来、自分が今どの裁判の原稿を書いているのか分からなくなるような日々を過ごしておりました。ざっと挙げてみると
1月11日 福知山線脱線事故でJR西日本前社長の判決
2月20日 光市母子殺害事件の上告審判決
3月 7日 東住吉区放火殺人事件の再審開始決定
…という感じ。実はこれ以外にも、
3月16日 ミナミの引きずり死事件で無罪判決
のように判決の内容によっちゃ小さな記事で収まったものが、ニュースバリューがでかくなる司法判断が示されててんやわんやしちゃっちゃったものもある。
本来ならブログのネタに事欠かないわけだが、こんだけ続くと、とてもじゃないが日々の出稿をこなすだけで精一杯なんであしからず。
で、きょうは、あの人である。かつて「帝王」と呼ばれたあの人。
実はここんとこ名古屋に出張にいけば今池のCyberseekers、東京ならば宇田川町のMothers Recordで散財してしまうフクトミの頭ん中で、「帝王」といえばすっかりマイルス・デイヴィスになっちゃってるんだが、そうではない。
「食肉の帝王」こと浅田満被告(73)。きょうというか、すでにきのうの2日、最高裁で判決があったんである。
で、上告審判決は破棄差し戻し。予想していたこととはいえ、また大阪の裁判所に帰って来ちゃうんだな、これが。
フクトミが浅田被告の公判を取材したのは、1審全部と2審の途中まで。というか、毒物カレー事件の控訴審とハンナン牛肉偽装事件の公判が始まるんで裁判担になったようなもんである。その割には、弊ブログで浅田被告のことを書いたのは、平成19年2月14日付のエントリ
◇食肉の帝王、再び《在庫ネタ》
http://fukutomim.iza.ne.jp/blog/entry/117565/
の1回こっきり。自分でも意外だが。
とはいえ昔取った杵柄、ってやつで上告審判決にあわせてサイド原稿を書いたのだが、なんとニュースが多くてボツ。しかたないので、ここに貼り付けておこう。
〝外堀〟埋めて差し戻し勝ち取る
ハンナン牛肉偽装の浅田被告
浅田満被告は控訴審でも上告審と同様、証拠隠滅教唆罪の無罪を主張したが、「見つかった書類はコピーの可能性がある」と退けられていた。だが上告中に、実際に隠滅行為を行ったとされたグループ会社元取締役の再審無罪が確定。実行犯という〝外堀〟を埋めたことが、最高裁を動かすことにつながったといえる。
浅田被告は1審では大筋で起訴内容を認めていたが、控訴審で弁護人が交代し、証拠隠滅教唆罪については「弁護人の調査で、廃棄されたはずの書類が見つかった」と無罪を主張。証人出廷した元取締役も「捜査段階では汚職の立件を狙って再逮捕を繰り返され、隠滅を認めてしまった」と証言したが、大阪高裁は認めなかった。
ところが浅田被告の上告中に、元取締役は大阪地裁へ再審請求。検察側は争う姿勢を示したが、再審公判で無罪が言い渡されると控訴せず、無罪が確定した。
この流れを受け、検察側は今年2月に開かれた浅田被告の上告審弁論で、教唆罪は無罪を言い渡すべきだと主張を改めていた。
それにしても浅田被告の他にも、銃刀法違反事件の山口組元若頭補佐、滝沢孝被告(74)やら平野区母子殺害放火事件の森健充被告(54)やら、かつて裁判担だったころに取材した事件が、キャップになって戻ってきても差し戻しのおかげでまだ大阪で係争中というのは、なんというか。差し戻しは恐ろしい。ほんとうに驚くべきは、この3件の主任弁護人が同じ弁護士だという事実なのだが。
だってそうでしょう。上告棄却が当たり前の最高裁を相手に破棄差し戻しをとるだけでたいへんなものだが、森被告の場合は2審が死刑判決。最高裁が事実誤認を理由に2審の死刑判決を破棄したのは、戦後わずか7件目のレアケースだ。
滝沢被告の場合は、1、2審とも無罪だったのを最高裁に有罪方向で差し戻されてしまったわけだが、それでも差し戻し審で3度目となる無罪判決をきっちりとっている。なんというか、凄腕、なんて陳腐このうえない言葉では表現しきれない。
…上告審判決についてなにも書かないうちに眠気が限界に達してきてしまった。あとは判決文をアップしてお茶を濁しておこう。
うーん、たまったネタをどうしよう。
☆☆ 判 決 全 文 ☆☆
【主文】
原判決を破棄する。本件を大阪高裁に差し戻す。
【理由】
弁護人の上告趣意のうち、判例違反をいう点は事案を異にする判例を引用するものであって本件に適切でなく、その余は事実誤認、再審事由、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
しかしながら所論は、被告人は証拠隠滅を教唆したことはなく、そもそも証拠隠滅の事実がないのに、証拠隠滅教唆の事実を認定した1審判決を是認した原判決には事実誤認があると主張するので、職権により判断する。
■1 証拠隠滅教唆に関する1審判決の認定事実の概要
本件のうち証拠隠滅教唆につき、原判決が是認した1審判決認定の犯罪事実の概要は、被告人が牛肉在庫緊急保管対策事業(以下「保管対策事業」という)等を利用して敢行した詐欺及び補助金適正化法違反に係る自己の刑事事件について、自己が代表取締役を務めるハンナンマトラス株式会社の取締役を教唆してその証拠を隠滅させようと企て、
①平成15年3月上旬ごろ、同社事務所で同人に対し、「羽曳食の書類の中に問題のありそうなものがあれば処分しときなさい」などと申し向けて上記刑事事件に関する書類の廃棄を依頼し、同人をしてその旨決意させ、よって、そのころ同所で、同人らをして羽曳野市食肉事業協同組合等の13年度分ないし14年度分の総勘定元帳、決算書、振替伝票、納品書及び請求書等の一部をシュレッダーにかけて裁断させ、
②16年4月14日ごろ、同社事務所で同人に対し、「事業に関する書類は全部処分しておきなさい」などと申し向けて上記同様の書類の廃棄を依頼し、同人をしてその旨決意させ、よって、同月15日ごろ、同所で,同人らをして、羽曳野市食肉事業協同組合等の13年度分ないし15年度分の決算書、振替伝票、納品書及び請求書等の一部をシュレッダーにかけて裁断させ、
もって、それぞれ証拠を隠滅させた、というものである。
■2 訴訟の経過
記録により認められる本件訴訟等の経過は次のとおりである。
(1)被告人は1審公判では本件証拠隠滅教唆の事実を認めていたところ、1審判決は本件証拠隠滅教唆のほか、詐欺、補助金適正化法違反の各事実を認定し、被告人を懲役7年に処した。
これに対し、被告人は詐欺の事実に関する事実誤認、法令適用の誤り、補助金適正化法違反の事実に関する事実誤認に加え、本件証拠隠滅教唆の事実に関する事実誤認、さらには量刑不当を理由に控訴するとともに、1審判決後に自宅の納戸にあった段ボール箱2箱の中から、隠滅対象として認定された経理関係書類の一部である
①13年度及び14年度の総勘定元帳
②13年度ないし15年度の決算書
③14年度及び15年度の振替伝票
④羽曳野市食肉事業協同組合宛ての13年度の納品書
⑤13年度ないし15年度の請求書
を含む、羽曳野市食肉事業協同組合等の経理関係書類(以下「被告人保管書類」という)を発見したとして、これらを証拠物としてその取り調べを請求するに至った。
原判決は、被告人保管書類は複製されたものである可能性が高く、発見経緯に関する被告人らの説明も信用し難い上、正犯者である取締役らの供述の信用性に影響を与えないから事実誤認はないなどとして控訴を棄却した。
(2)他方、被告人から指示を受け本件証拠隠滅に及んだとされる取締役については、16年11月10日、証拠隠滅罪により懲役1年6月、執行猶予3年に処せられ、同月18日、判決は確定した。
しかし、取締役は20年12月16日、確定判決後に隠滅したとされた経理書類等の一部が被告人方及び検察庁になお保管されていたことが明らかになったとして、再審請求に及んだ。大阪地裁は22年11月25日、被告人保管書類及び検察庁に保管された書類はいずれも本件で裁断したとされる書類の原本の一部であると推認され、これらの分量の多さからすると、これが本件で裁断したとされる書類に占める割合は相当に大きく、納品書等を含めた未発見の残部についても裁断されたとの判断を維持できず、証拠隠滅の事実は全体につき合理的な疑いを生じている旨判示して再審開始を決定した。
再審公判において、検察官は被告人保管書類が原本であることを争わず、取締役らが裁断したのは被告人保管書類以外の経理関係書類、すなわち、
①食肉業者から羽曳野市食肉事業協同組合宛ての納品書
②羽曳野市食肉事業協同組合から大阪府食肉事業協同組合連合会等宛ての納品書控え
③食肉業者から羽曳野市食肉事業協同組合が買い受け、大阪府食肉事業協同組合連合会等に売却した食肉の入庫又は名義変更について通知するために、株式会社大阪食品流通センターが作成し、羽曳野市食肉事業協同組合宛てに送付していた書類
であると主張した。これに対し、大阪地裁は24年2月8日、羽曳野市食肉事業協同組合等の経理関係のあらゆる書類を裁断したとの取締役らの自白の信用性には疑問があり、検察官の主張する未発見の経理関係書類が優先的に裁断されたと考えることにも無理があるとして、取締役を無罪とした。この判決は検察官の上訴権放棄により同月10日確定した。
■3 当裁判所の判断
(1)原判決が是認する1審判決において隠滅対象とされた書類は、羽曳野市食肉事業協同組合等の13年度分及び14年度分の総勘定元帳並びに13年度分ないし15年度分の決算書、振替伝票、納品書及び請求書等の一部である。「一部」の中に何が含まれているのか必ずしも定かでないが、少なくとも、具体的に例示されている同組合等の総勘定元帳、決算書、振替伝票、納品書及び請求書(以下「重要な経理関係書類」という)がこれに含まれるのは当然であって、被告人保管書類の中には、その標題等の体裁を見る限り、これらに該当するものが存在する。
そして、被告人保管書類を見ると、金融機関が作成した当座勘定照合票、税務署の受付印が押された確定申告書、取引先の倉庫会社が作成した出庫重量報告書、名義変更完了通知書、電力会社等が作成した請求書、大阪府の収受印が押された総会議事録、法務局の印が押された登記簿謄本等、明らかに原本と認められる書類が多数含まれていること、総勘定元帳等には作成時期に応じて筆跡の異なる手書きの記載があり、日常業務の中で使用されていた形跡があることなどに照らすと、被告人保管書類の中の重要な経理関係書類は原本である可能性が極めて高い。
1審判決の認定によれば、被告人は取締役に対し、15年3月上旬ごろには「羽曳食の書類の中に問題のありそうなものがあれば処分しときなさい」と、16年4月14日ごろには「事業に関する書類は全部処分しておきなさい」とそれぞれ指示したとされており、その趣旨は羽曳野市食肉事業協同組合等の経理関係書類をすべて処分するようにというものであるのに、上記のとおり、被告人の指示により廃棄したはずの重要な経理関係書類の多くが原本として存在している可能性が極めて高いのであって、少なくともその限度において廃棄行為の存在に重大な疑いがあり、ひいては被告人の指示により同組合等の経理関係書類を廃棄した旨の取締役らの供述の信用性に全体として疑問が生じるといわざるを得ない。
なお、検察官は当審で、被告人保管書類は取締役らが廃棄したと認定された証拠の原本の一部である可能性を否定するのは困難であるとしながらも、当初は取締役の再審公判での上記主張と同様、なお未発見の経理関係書類が廃棄されたものと認められる旨主張していたが、その後、この主張を撤回し、取締役の無罪判決が確定していることなどからして、被告人に関する本件証拠隠滅教唆の事実についても無罪が言い渡されるべきである、との意見を述べるに至っている。
(2)以上によれば、被告人保管書類の中の重要な経理関係書類の原本性を否定し、これらの書類を取締役らが廃棄して隠滅したと認定した原判決は、判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認をした疑いが顕著であり、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。なお、本件証拠隠滅教唆の罪は、詐欺、補助金正化法違反の各罪と刑法45条前段の併合罪の関係にあるとして有罪の判断がされ、判決がされたものであるから、上記違法は原判決の全部に影響を及ぼすものである。
■4 結論
よって、刑訴法411条3号により原判決を破棄し、同法413条本文に従い、本件を大阪高裁に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。







by なん
The Boy With The Thorn In Hi…