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「11人の怒れる男」ないしは「11人の優しい日本人」 ニュース記事に関連したブログ

2010/01/30 06:08

 

当分眠り続けるつもりが、目を覚ますはめになってしまいました。

 


 全壊、いや前回(阪神大震災の原稿ばかり書いてると、こんな誤変換が生じるわけです)1月4日付のエントリで〝休眠宣言〟をしてから、1カ月も経たないわけなんですが。なんだかんだで新たなエントリを記すはめになっております。はあ。

 

 3日前の1月27日、フクトミは大阪におりました。大阪本社での研修に、各支局から1人ずつ参加しなければならかったからであります。で、研修を終えて大阪地裁近くのなじみのカレー屋で早めの晩メシでも食うか、と考えていたところに、ケータイが鳴りました。神戸総局のデスクからです。はて。

 

 「明石の議決が出たんだけど」

 

 その言葉を聞いた瞬間、晩メシ抜きを覚悟しました。

 

 「明石の議決」とは平成13年7月に兵庫県明石市の花火大会で起きた事故をめぐる検察審査会の議決のことです。歩道橋上で見物客が折り重なるように倒れ11人が亡くなった事故をめぐっては、主催者である明石市の担当者3人と警備を担当した明石署の地域官、警備会社支社長の計5人が起訴された一方、明石署の署長、副署長は不起訴となりました。そして、これを不服としたご遺族の申し立てに対する議決が出た、というわけです。
 しかも、単なる議決ではありません。ご存知の方も多いでしょうが、21年5月に裁判員法とともに改正検察審査会法が施行されました。改正法では、「起訴相当」議決の後に検察官が再び不起訴とした場合は再審査を行い、そこで審査員11人中8人以上が「起訴すべきだ」と判断すれば、強制的に起訴されることになりました。で、今回の議決はその全国初のケースとなったわけです。

 

 そこからは大急ぎで神戸総局に向かって、出稿作業が未明まで続きました。でまあ、なんといっても全国初だし、議決書の要旨をアップしておくか、と考えた次第です。例によって以下の議決書要旨は、犠牲者および申立人であるご遺族のお名前と、やたらと多い読点を一部省いたほかは提供された書面そのまんまです。1万字の字数制限ぎりぎりなので、今回は議決に対する感想、評価は控えます。

 

 では、どうぞ。

 

 


☆☆ 議 決 書 要 旨 ☆☆
平成21年神戸第二検察審査会審査事件(起相)第1号
申立書記載罪名  業務上過失致死傷
検察官裁定罪名  業務上過失致死傷
議決年月日     平成22年1月27日
議決書作成年月日 平成22年1月27日

 


審査申立人
 別紙審査申立人目録記載のとおり
審査申立代理人
 別紙申立代理人目録記載のとおり
被疑者
 (氏名)  榊和晄
不起訴処分をした検察官
 (官職氏名)神戸地方検察庁検察官検事 中井隆司

 

 当検察審査会は上記被疑者に対する業務上過失致死傷被疑事件(神戸地検平成21年検第5266号)につき、平成21年9月30日、上記検察官がした再度の不起訴処分の当否に関し、検察審査会法第41条の2第1項により審査を行い、次のとおり議決する。

 

【議決の趣旨】
 別紙犯罪事実につき、起訴すべきである。
【議決の理由】
■1 総論
 本件は検察審査会において過去3度に渡り起訴相当の議決がされたが、検察官は4度に渡る再捜査の結果、いずれも嫌疑不十分で不起訴とする判断を維持してきたという経緯がある。
 本検察審査会では、検察審査会法改正により、本議決で起訴すべきとの議決がされれば、検察官に更なる捜査を委ねるのではなく、指定弁護士により被疑者を強制的に起訴するという重大な結果が生じる事を真摯に受け止め、検察官及び申立人の各主張、証拠について今一度、慎重に精査、検討し、十分に議論を尽くしてきた。
 検察官の基本的立場は被疑者が有罪か無罪かという点にあり、そのような立場も公益の代表者として被疑者に重大な結果を生じる公訴提起を担う以上、理解出来るが、本検察審査会は議論の結果、基本的立場を被疑者が有罪か無罪かという検察官と同様の立場ではなく、市民感覚の視点から、公開の裁判で本件の事実関係及び責任の所在を明らかにして、本件の様な重大な事故の再発防止を望む点に置いている。
 そして、本検察審査会は後述するような理由から、本件について被疑者には過失があると判断できるため、起訴すべきであると結論付けた。
■2 本検察審査会における過失の把握及び判断の仕方について
(1)当日の過失に限定しないこと
 本件において被疑者に過失があるか否かについては、過去の検察審査会の議決においては警備計画作成段階における過失、本件当日における過失という把握で検討されており、検察官も両過失を別個独立の過失と把握して捜査を行ってきた様である。
 本検察審査会においては、上記本件の事実関係、責任の所在等を明らかにするという基本的立場からすると、警備計画作成段階にまで遡らないと本件の事実関係等は理解出来ない事、雑踏警備における事前計画の重要性を重視している事から、被疑者の過失の把握について当日の過失のみに限定することはしない。
 そもそも本検察審査会では、本件に関する被疑者以外の警察、明石市、警備会杜担当者の刑事裁判において検察官が当日における注意義務違反のみを訴因とした結果、当日における過失のみが裁判の対象になっている点が理解出来ない。
(2)過失の把握、判断の仕方について、本検察審査会は本件に関する刑事裁判例を参考にすること
 本検察審査会は警備計画作成段階の過失と当日の過失を別個独立に考えるのではなく、本件に関する被疑者以外の警察、明石市、警備会社担当者の刑事裁判の判決で判示された過失の把握、判断の仕方を基本に検討をする。
 具体的には、
 上記判決が認定した本件事故の原因と発生時刻を前提として、現実の通りに事実が推移しても、遅くともどの時点でどのような措置を執っていれば本件事故を回避できたか、少なくとも被害の規模をかなり小さく出来たのかを検討し、被疑者にとって、ある時点での注意義務違反が認められれば、それより更に前の時点での注意義務違反を問題とするまでもなく、本件事故についての過失責任を肯定する。
 警備計画準備段階の事情については、主として予見可能性の有無の判断に用いるが(予見の程度が大きければ、尽くすべき回避義務の程度も大きくはなる)、過失と評価する以上、被疑者が「現に認識していた」事情だけでなく、容易に認識できた事情も基礎として判断する。
■3 被疑者の過失
(1)予見可能性
 被疑者には、
 大蔵海岸公園で夏まつりが初めて行われることから、同会場で同種同規模のイベントに関する雑踏警備の実績がないこと
 夏まつりには10万人を超える参集者が見込まれ、その行事の性質上、幼児を含む年少者や高齢者なども多数参集してくることが予想されたこと
 夏まつり会場である大蔵海岸公園へ向かうにはJR朝霧駅と接続された通称朝霧歩道橋を利用する必要があることから、多数の参集者は歩道橋を利用することが予想されたこと
 歩道橋の構造等からして、歩道橋南端部付近や南側階段において参集者が滞留し、大混雑を生じることが容易に予想されたこと
 夏まつりの夜店の配置状況、花火の観覧場所から、歩道橋南端部付近や南側階段において参集者が滞留することが予想されたこと
 花火大会の開始、終了時刻は予定されており、花火開始時刻に合わせてJR朝霧駅側から多数の参集者が歩道橋を通って大蔵海岸公園に集まり、花火大会終了前後からはいち早く帰路に着こうとする参集者がJR朝霧駅方面に向かうために歩道橋に殺到し、それによって歩道橋内において双方向に向かう参集者の流れがぶつかり、滞留がいっそう激しくなることが予想されたこと
 夏まつりより参集者が少なく年少者や高齢者の参集者も少ないカウントダウン時にも歩道橋内で雑踏事故の発生が危惧されるような状態が生じていたこと
 夏まつりに向けての雑踏警備計画は、歩道橋における参集者の滞留による混雑防止の有効な方策はなく、監視体制や混雑が生じた場合の規制方法、各関係機関との連絡体制について具体的な計画は策定されなかったこと
 について、認識、認識可能性があった。また当日についても、現場警察官との無線等のやり取りから、遅くとも午後7時には本件事故の発生を予見できており、被疑者に事故発生の危険がより具体化しつつあることを予見させ、一層の警戒心を喚起させるに足りるもの(配下警察官等の出動という方法による措置を講じる必要もある)と認識し、認識し得たと考えざるを得ないのであり、予見可能性はあった。
(2)結果回避義務
 主催者側責任者は本件について、歩道橋の状況についての常時監視義務雑踏警備の実施状況を常時監視する義務規制措置を講じる義務が課されているが、被疑者の立場からすれば、主催者側責任者以上に上記各義務を尽くす必要があった。
 上記監視義務は、被疑者が警察側の責任者の1人として、署本部の無線、携帯電話、歩道橋周辺についても遠隔操作をして映し出すことができるビデオカメラの映像等の物的設備等から自らの見識の及ぶ範囲、あるいは更に現場の配下警察官に問い合わせて現場の状況を確認するなどして、具体的な規制措置の要否や内容を検討し得るようにするためのものであり、被疑者には監視の結果もたらされた情報に従い、雑踏事故の回避を図るため適時、配下警察官、近畿管区機動隊等の出動による規制措置を執る義務があった。
 監視義務の懈怠及び規制措置を実施する義務の懈怠と本件事故の発生の相互の関係をみるに、多数の事故遭遇者、参集者の一致した供述によって認められる歩道橋内の客観的状況としては、午後7時45分に花火の打上げが始まると、歩道橋内からでも花火を見ることができるため、その南側半分程度は参集者の流れは一連の花火が打ち上げられている間はほとんど停滞し、次の一連の花火との間のごくわずかの時間だけわずかずつ南進するにすぎず、参集者が次第に群衆圧力を感じるようになった。このほか、花火開始後も歩道橋の北側からは続々と参集者の流入が続いていたこと、階段からの参集者の流出は階段下の混雑の激化も相まって、逆に鈍化しつつあったことは争いがない。
 被疑者はこれらの事実を、歩道橋の状況を厳重に監視していれば遅くとも午後7時50分ころには確実に判明していたと認められる。そして、このような状況が解消されないまま花火終了を迎えれば、歩道橋内又は階段で双方向の群衆の流れが衝突することは不可避の事態であるから、雑踏事故の発生が切迫し、一刻も早く規制を行う必要性があることを極めて容易かつ明確に認識できる。
 また被疑者自身も、午後7時56分の時点でビデオカメラの映像を見て滞留しているのを認め、また現場の配下警察官から午後8時の定時報告がされて、現場が混乱していることは容易に想像できるのに、それを漫然と放置した点は争いがない。
 したがって被疑者には、遅くとも午後8時頃には、直ちに現場の配下警察官、現場の配下警察官では対処出来ない場合には近畿管区機動隊等の出動による規制措置を執る義務が生じたといえる。
 そして、被疑者がこの義務を励行していれば本件事故は回避できたと認められるが、署本部副本部長、総括指揮班指揮官として何ら指示等をせず、漫然と放置したのであり、義務違反行為は明らかである。
 この点、被疑者は「歩道橋を渡るのに30分かかった」旨の無線、午後7時26分の配下警察官から地域官に対する「1メートル進むのに5分かかる」との無線は聞こえなかった、ビデオカメラの映像等にしてもアクリル板が曇って内側が見えにくくなったと供述し、検察官もかかる被疑者の供述を信用している。
 しかし問題なのは、被疑者が歩道橋、雑踏警備の実施状況について常時監視義務を負いながら、仮に被疑者の供述を信用したとしても、無線の混乱やビデオカメラの映像等では現場の状況がはっきり分からないことを自認しているにも関わらず、それに代わった手法等を用いて現場の状況を把握しないことなのであって、百歩譲って被疑者はこのような規制措置の要否を適切に判断するに足る情報を得ていないとしても、それはその情報の獲得の前提である監視義務を自ら怠った結果なのであるから、被疑者は規制措置を執らなかったことについでも注意義務違反があったという評価を免れない。
(3)本件では信頼の原則が適用されないこと
 検察官は現場指揮官である地域官が、いわば雑踏警備のプロであり、署長からも現場の指揮権を委ねられていたことから、明石警察署の警備計画の下でも、地域官が歩道橋周辺に配置された機動隊員等を運用して事故を防止することは十分に可能であったし、当日、巡回していた警察官からは現場指揮官の地域官に対して、歩道橋およびその周辺の混雑に関する情報が伝わっており、指揮権が委ねられた地域官が速やかに部隊を動かして規制を実施していれば十分に事故を防止しうる状況になった旨主張し、被疑者の予見可能性や結果との因果関係を否定する。
 しかし、被疑者は供述調書において地域官の評価について、夏まつりの警備計画段階の仕事振りを引用しながら「少し頼りない面があり、報告連絡が遅れる事が多く、時々注意していた」と述べるのであり、夏まつり当日は地域官の現場指揮を全面的に信用していたとの主張は俄に信用出来ない。
 夏まつりのような多数の市民の生命、身体、財産の危険が及ぶ可能性がある雑踏警備の現場指揮について高度の信頼を寄せることが許される前提条件を欠いている。
(4)地域官の行動によって因果関係は切断されるかについて
 確かに地域官は午後7時55分の部下からの機動隊投入の報告を署本部に伝達しておらず、その伝達があれば、被疑者らが機動隊等を投入して事故を防げた可能性はある。
 しかし、複数の者が別々の立場から同一の結果を回避する義務を負う場合において、それらの者の注意義務違反が競合してその結果が生じた場合には、ある行為者以外の者が注意義務を尽くしていれば結果の発生を回避できた場合であっても、当該行為者に注意義務違反がなければ結果が回避されていたと認められる以上、その行為者の過失責任を免れないのであり、被疑者に今まで指摘した注意義務違反がなければ結果が回避されていたことは明らかである以上、地域官の行動によって因果関係は切断されない。
(5)まとめ
 以上からして、本検察審査会は被疑者には本件事故について過失があったと判断する。
■4 公訴時効の成立について
 本検察審査会においては、被疑者に過失があると判断する以上、公訴時効が成立しているかについても検討をするが、過失犯が競合する場合に公訴時効の停止が認められるのかという事例について先例がない以上、判断に迷う事項ではあったが、結論としては、前回の検察審査会の結論と同様、被疑者と地域官との過失の関係は刑事訴訟法第254条2項の「共犯」に該当すると判断する。
 つまり被疑者と地域官とは、階級制度を有する上命下服の警察組織の中で同一署内で直属の上司、部下という関係にあり、被疑者も地域官も夏まつりにおいて市民の生命、身体に危険が及ぶ雑踏事故が起きないようにするという点では共通の使命があり、雑踏事故を防ぐ注意義務という観点からは、同種の注意義務を負っていたといえる。
 そして、被疑者が署本部から指揮をする立場であり、地域官が現場において指揮をする立場であるという立場の違いはあるものの、警備計画段階の事情については共通であり、予見可能性を基礎付ける事情も大部分が共通しており、本件事故を防ぐ結果回避義務の終局措置である午後8時10分頃までに機動隊等の警察官に逆流阻止等の指示を出すべき措置は、被疑者にも地域官にも可能な措置であったことからすれば,両者が負っていた注意義務はほぼ同内容といえる。
 本検察審査会においても、前回の検察審査会と同様、公訴時効及び時効停止の趣旨を尊重し、被疑者と地域官は立場は違えど実質的には相互利用補充している共犯関係と評価でき、公訴時効の停止における「共犯」といえると判断した。
■5 最後に
 本検察審査会は最初に述べたように、被疑者が有罪か無罪かという立場ではなく、市民感覚の視点から、公開の裁判で本件の事実関係及び責任の所在を明らかにする点に重点を置くという基本的立場をとっている。
 その基本的立場からすると、検察官の訴因の設定の仕方によって警備計画段階における事情について重点的な審理の対象にされていない点、明石警察署内において具体的に結果回避の措置を執れた者の責任すら追求されていないことは、本件雑踏事故の根本原因を究明することには繋がらないと考える。
 被疑者が長年に渡り身分が不安定な状況に置かれたことも十分に考慮したが、二度とこのような悲惨な事故を起こさないためにも、公開の場である裁判において被疑者の過失の有無を明らかにし、その責任の所在を明確にすべきであると考え、前記趣旨のとおり議決する。


(別紙)
【犯罪事実】
■1 被疑者は兵庫県明石警察署に勤務する警察官であり、平成13年7月21日、兵庫県明石市が同市大蔵海岸通1丁目所在の大蔵海岸公園において開催した「第32回明石市民夏まつり」に関し、同署副署長として署本部本部長である同署署長を補佐し、自らは署本部副本部長、総括指揮班指揮官として夏まつりの警備に当たり、雑踏警備計画の企画、立案を掌理し、主催者である明石市、警備会社等への指導・助言、配下警察官を指揮して一般観衆等の安全確保・雑踏事故防止等に関する警備を実施する業務に従事していたものである。
■2 夏まつりに関しては、夏まつり当日(平成13年7月21日のことをいう)に至るまでに雑踏事故発生の原因となり得る以下のような諸事情があった。
(1)夏まつりは従来からの会場を変更して、大蔵海岸公園において初めて行われたものであって、同会場で同種同規模のイベントに関する雑踏警備の実績はなかった。
(2)夏まつりには10万人を超える参集者を見込んでいたが、その行事の性質上、幼児を含む年少者や高齢者なども多数参集してくることが予想された。
(3)夏まつりの会場となった大蔵海岸公園は西日本旅客鉄道株式会社朝霧駅の南方に位置し、同駅とは兵庫県明石市大蔵海岸通1丁目1番先に所在する通称朝霧歩道橋によって接続されており、JR朝霧駅を利用して集まってきた参集者を始め、多くの参集者が歩道橋を通って大蔵海岸公園に参集することが予想された。
(4)歩道橋は全長約103.65メートル、歩行有効幅員約8メートルであって、歩道橋南側は展望に適したテラス兼エレベーターホール(約69.9平方メートル)となっており、歩道橋南端部には約80度に西向きに折れた幅約3.2メートル、長さ約18メートル、48段の階段(途中2か所に踊り場がある)があり、これによって約7.2メートル下の大蔵海岸公園を東西に走る市道大蔵町48号線の南側歩道に接しているが、歩道橋のこのような構造や歩道橋南端部や南側階段は大蔵海岸東側の堤防から打ち上げられる花火の絶好の観覧場所となることから、その南端部付近や南側階段において参集者が滞留し、大混雑を生じることが容易に予想された。
(5)夏まつりにおいては、180余の夜店が歩道橋南側階段下の市道大蔵町48号線の南北歩道上に出店することとなっていたことから、夜店周辺に参集者が密集して人の流れが滞り、また歩道橋南側階段南西側の芝生広場(海峡広場)は花火を観覧するのに絶好の場所であることから、そこに参集者が集まって場所取りなどをすることにより、歩道橋南側階段からの参集者の流出が妨げられ、それらによっても歩道橋南端部付近や南側階段において参集者が滞留することが予想された。
(6)夏まつりの花火大会は同日午後7時45分に開始され、同日午後8時30分に終了することが予定されていたため、花火開始時刻に合わせてJR朝霧駅側から多数の参集者が歩道橋を通って大蔵海岸公園に集まってくること、また花火大会終了前後からはいち早く帰路に着こうとする参集者がJR朝霧駅方面に向かうために歩道橋に殺到すること、それによって歩道橋内において双方向に向かう参集者の流れがぶつかり、滞留がいっそう激しくなることが予想された。
(7)大蔵海岸公園においては、平成12年12月31日から翌平成13年1月1日にかけていわゆるカウントダウン花火大会が行われたが、その際、午前零時のカウントダウン花火大会に向けて参集者が歩道橋に殺到して相当の混雑状態となり、警備員、警察などの協力によって歩道橋北側出入口と歩道橋南側階段下に規制線を張るなどして歩道橋に殺到する参集者の流入を規制、整理することにより、雑踏事故の発生を未然に防ぐことができたものの、雑踏事故の発生が危惧されるような状態が生じていた。
(8)夏まつりに向けて明石市、株式会社ニシカン及び明石警察署において、雑踏警備計画策定に向けた検討が重ねられてきたが、そこでは歩道橋における参集者の滞留による混雑防止のための有効な方策はとられず、また歩道橋の混雑状況をどのように監視するのか、そして混雑してきた場合にどのような規制方法をとるのか、どのような事態になった場合に警察による規制を要請するのか、その場合の主催者側と明石警察署との間の連携体制をどのようにするのかなどといった詳細について、具体的な計画は策定されなかった。
■3 被疑者は夏まつりに至る前に、前記2の(1)乃至(8)記載の各事情を認識し又は容易に認識し得たのであるから、大蔵海岸公園において花火大会に伴う夏まつりを実施した場合には、歩道橋に参集者が殺到して滞留が起こり、雑踏事故が発生する危険があることを予見し、それを未然に防止するために適切な雑踏警備計画が立てられているかどうかを確認した上、本件夏まつり当日、雑踏警備の状況を的確に把握して歩道橋において雑踏事故発生の危険が現実化しそうな場合に適切に対応するため、自ら又は配下警察官をして歩道橋への参集者の流入・滞留状況や雑踏警備の実施状況を常時監視すべきであった。
■4 そして夏まつり当日には、事前に予想きれたとおり、午後6時ころからJR朝霧駅側から多数の参集者が歩道橋に流入し始め、午後7時ころには歩道橋に参集者が滞留し始め、次第に歩道橋の通行が困難な状況になりつつあった上、花火大会開始に向けてますます多くの参集者が歩道橋に流入して滞留し、混雑が進行する状況になっていた。
■5 夏まつり当日のこのような状況下において、被疑者は前記のとおり、自ら又は配下警察官を通じ、歩道橋への参集者の流入・滞留状況や雑踏警備の実施状況を常時監視することはもとより、午後6時30分ころまでには歩道橋に多数の参集者が参集し滞留しつつあることを認め、その後もますます多くの参集者が集まり、特に花火大会終了前後からは歩道橋内において双方向に向かう参集者の流れがぶつかり、滞留がいっそう激しくなることが容易に予想できたのであるから、雑踏事故発生の危険がより具体化しつつあることを予見し、同監視をさらに厳重にして的確に状況を把握した上、遅くとも午後8時ころまでには配下警察官、近畿管区機動隊等に指示して、参集者の迂回路への誘導や分断等により歩道橋への流入規制を実施し、もって雑踏事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があった。
■6 それにもかかわらず、被疑者は上記業務上の注意義務を怠り、雑踏事故が発生することはないものと軽信し、雑踏事故の発生を回避するための前記のような措置をとることなく、漫然放置した過失により、平成13年7月21日午後8時ころから同日午後8時50分ころまでの間、歩道橋において多数の参集者の過密な滞留あるいは大蔵海岸公園へ向かう参集者と同公園からJR朝霧駅方面へ向かう参集者とのもみ合いによる強度の群衆圧力を生ぜしめ、同日午後8時40分ないし50分ころ、多数の参集者を折り重なって転倒させるなどし、
 よって、歩道橋において、183名に加療1日間ないし加療251日間を要する頸椎捻挫、胸部圧挫傷等の傷害を負わせるとともに、そのころから同月28日午後6時36分ころまでの間、同歩道橋南端付近ほか1か所において、11名を全身圧迫による呼吸窮迫症候群(圧死)等により死亡するに至らせたものである。

 


 

 

 

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関連ニュース

■■ ご 報 告 ■■

2010/01/04 09:00

 

さて、みなさま明けましておめでとうございます。

 


 2カ月半ぶりの更新になりますが、ここでご報告があります。

 

 フクトミ、実は異動になりました。しかもなんと、昨年11月1日付です(笑)。で、現在は兵庫県西宮市の阪神支局で仕事をしております。内示が出たのは10月19日で、前回の更新の2日後だったわけですが、まったく予想してませんでした。うーん、人事情報って事前にいろいろ飛び交うけど、自分に関することだけは分からんのだなあ。

 


 これまで、大阪社会部内で9年ちょっとの間、
 

    所轄回り→大阪府警担当→司法担当→遊軍
 

ってな感じで担当替えは経験してきましたが、まさに転勤という異動は和歌山支局から大阪社会部に上がってきた平成12年7月以来です。で、大阪から西宮というのは電車で15分ほどの距離なのですが、この仕事の常で、なんかあったらすぐ駆けつけられるところに住まなければならないわけです。このため、大阪市内から西宮市内に引っ越しせざるを得なくなりました。
 

 そんで、引っ越しがこれまたたいへんでした。なにしろこれまでの人生で最も長く住んだ家なもんですから。フクトミ、本や雑誌の類を捨てられないタイプなんですが、今回ばかりは勢いで段ボール20箱余りを引っ越し屋さんに処分してもらいました。
 で、異動の挨拶ができなかった人も多かったものですから、挨拶状やら年賀状でその旨をご挨拶して、現在に至るわけです。

 

 …以上、長々と書き連ねてきたのは、更新が滞った言い訳であります。なにしろ直接のご挨拶どころか書面でのご挨拶もしていないのに、このブログ上で異動をお知りになる失礼はまずかろうという方も多いもので。もう賀状も届いただろうというタイミングを待って、ブログ上で異動をご報告させていただいた次第であります。

 


 さて、このブログの今後について

 

 フクトミ、司法担当だった平成18年9月にこのブログを社命で始めたわけです。ご覧の通り、基本的に裁判の傍聴記というスタイルで。で、その後、平成19年5月に遊軍担当になってからも、フィールドが大阪地裁、大阪高裁から他の裁判所に移っただけで傍聴取材は続いたもんですから、このブログも続けてまいりました。

 

 ところがですね。阪神支局への異動にあたって上司から言われたのは、阪神支局は今回の異動に伴ってデスクを廃止するから、1月17日で発生から15年となる阪神大震災と、4月25日で発生5年となるJR福知山線の脱線事故をお前が仕切れ、ということであります。あと、明石市の歩道橋事故とJR脱線事故は、検察審査会の議決を経て強制起訴となる全国初および2件目の事例となる可能性が高いから、隣の神戸総局マターだけれども、神戸地裁で公判が始まったらお前が指揮をとれ、と。

 

 このへんのフクトミの運用に関しては、毒物カレー事件名張毒ぶどう酒事件の再審請求で動きがあったら頼むとか、光市の母子殺害事件や広島市の小1女児殺害事件については民事訴訟も含めてこれまで通り節目節目でめんどうを見てもらうからとか言われてみたり、どうもよく分からんのが正直なところです。そんなん、阪神支局員を他の支局のマターに使うって言われてもなあ。ま、とくにカレー事件なんかは、今さら他の人間がやろうったってできないだろうけど。

 

 とにかくまあ、確かなのはルーティンとしての傍聴取材の機会はないということです。ですから今後当分の間、基本的にこのブログを新ネタで更新することはないと考えていただければ、と思っております。
 

 「新ネタで」と記したのは、これまで書かねばと思って放置していたネタが若干ある(光市の母子殺害事件もそうです、とほほ)からですが。あと、「当分の間」というのも、サラリーマン人生、これから先どうなるか分かりませんからなあ。

 

 

 ということで、弊ブログはとりあえずのところは終了はいたしません。が、休眠状態に近くなると考えてください

 


 ではまた、機会があれば。

 


 

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エッシャーのだまし絵 ニュース記事に関連したブログ

2009/10/17 19:36

 

またも泊まりと泊まり明け夕刊勤務の合間をぬっての更新です。

 


 きのう16日、広島市の小1女児殺害事件の上告審判決が言い渡されました。結果は、破棄差し戻し。フクトミ、もちろん傍聴はしていないのですが、今回はこれについて書こうかと。

 


 この事件、平成17年11月22日に広島市安芸区で下校途中の木下あいりちゃん=当時(7)=が遺体で発見された、というものだ。その後、現場近くに住んでいたペルー人、ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(37)が逮捕・起訴され、広島地裁で公判が開かれることになった。
 18年7月4日の地裁判決は、死刑求刑に対し無期懲役を選択。被害者が1人の殺人事件での極刑選択の適否が高い関心を集めたわけだが、もうひとつ、注目点があった。裁判員制度を見据え17年11月施行の改正刑訴法で導入されたばかりの公判前整理手続きである。
 広島地裁は公判前手続きを適用したうえで、5日間の連日開廷で証拠調べを終了。当時としては画期的なスピード審理で、裁判員裁判のモデルケース」とされた。

 

 ところが。検察側、弁護側双方の控訴を受けて始まった2審で、20年12月9日、広島高裁は予想もしなかった判決を言い渡す。「1審は審理を尽くしておらず、その訴訟手続きは違法」として、審理を差し戻したのだ。

 


 この辺の経緯について、弊ブログでは平成20年12月6日付のエントリ「命の重み、極刑の重み①~⑤」と、同12月10日付のエントリ「The Long And Winding Road①~③」で記している。興味のある方はそちらを参照していただきたい。以下は、主な内容とリンク。

 

 

 

 ◇「命の重み、極刑の重み①」:公訴事実と検察側、弁護側双方の冒頭陳述要旨
    (http://fukutomim.iza.ne.jp/blog/entry/825536/
 ◇「命の重み、極刑の重み②」:論告要旨
    (http://fukutomim.iza.ne.jp/blog/entry/825570/
 ◇「命の重み、極刑の重み③」:最終弁論要旨
    (http://fukutomim.iza.ne.jp/blog/entry/825561/
 ◇「命の重み、極刑の重み④」:判決要旨(争点判断まで)
    (http://fukutomim.iza.ne.jp/blog/entry/825564/
 ◇「命の重み、極刑の重み⑤」:判決要旨(量刑理由)
    (http://fukutomim.iza.ne.jp/blog/entry/825619/
 ◇「The Long And Winding Road①」:控訴審判決要旨(コンパクト版)
    (http://fukutomim.iza.ne.jp/blog/entry/830402/
 ◇「The Long And Winding Road②」:控訴審判決要旨(前半)
    (http://fukutomim.iza.ne.jp/blog/entry/830449/
 ◇「The Long And Winding Road③」:控訴審判決要旨(後半)
    (http://fukutomim.iza.ne.jp/blog/entry/830451/

 

 


 で、これまでの経過をまとめると、以下のようになる。

 

 


  17年
    11月22日 事件発生。広島県警が捜査本部を設置
        30日 広島県警が殺人と死体遺棄の疑いでヤギ被告を逮捕
    12月21日 広島地検が殺人、強制わいせつ致死、死体遺棄の罪で起訴
  18年
    03月15日 広島地裁で公判前整理手続きが開始
        16日 ヤギ被告を入管難民法違反罪で追起訴
    05月12日 第8回協議で公判前手続きが終了
        15日 広島地裁で初公判
        19日 5日間連続の集中審理で証拠調べが終了
    06月09日 検察側が死刑を求刑し結審
    07月04日 広島地裁が無期懲役を宣告
  19年
    11月08日 広島高裁で控訴審初公判
  20年
    07月31日 控訴審が第5回公判で結審
    12月09日 広島高裁が1審判決を破棄、審理を広島地裁に差し戻し
  21年
    09月11日 最高裁で上告審弁論
    10月16日 最高裁が2審判決を破棄、審理を広島高裁に差し戻し

 

 


 さて、今回の上告審判決。死刑事件でもないのに最高裁が弁論を開いたことで、2審判決が見直される公算が極めて高いと見られていた。この場合、予想される判決は2通りある。破棄自判と破棄差し戻しだ。
 破棄自判といっても上告したのは弁護側だけだから、死刑が選択されることはない。とはいえ、最高裁が自判することはまれだ(電車内での痴漢事件で今年4月の防衛大教授への逆転無罪は、このレアケースに当たる)。
 ということで、高裁への差し戻しという判決は十分に予想された結末だったわけだが。それでもなあ、と思う。

 

 事件からすでに4年近くが経っている。よく分からない訴訟手続きの適法性をめぐり、行って戻ってまた広島高裁だ。ご遺族の心情はいかばかりかと思う。1審判決がすみやかに言い渡されただけに、その後の混迷はやりきれない。

 

 これも2審判決のときに記したことなのだが、死刑求刑事件での広島高裁判決に対する差し戻し率の高さばかりが印象に残ってしまう。第3次上告審での確定までに7度も判決が言い渡された八海事件に、平成4年に福山市で起きた強盗殺人事件。そして、光市の母子殺害事件。まったくもっていやはや。

 


 では、最後に判決要旨をアップしておきましょう。あ、要旨ではなくて全文だな。おそらく近いうちに裁判所のHPにもアップされるのだろうけれども、せっかくアクセスいただいた方はご覧になりたいだろうし。

 

 フクトミの手元には、ゆうべ最高裁担当にファクスしてもらった判決文があるのだが、A4判11枚である。このうち8枚目の途中まではこれまでの経緯が記されており、最高裁の判断が示されているのは実質3枚分だけだ。
 一応は判決の内容について感想めいたことを記しておくと、公判前手続きのあり方について、もっと具体的な指針のようなものが示されるのではと思っていた。おおまかには精密司法から核心司法へ、そして職権主義よりも当事者主義を、という指向が示されてはいるのだが。
 

 ただ、訴訟指揮に関し各裁判所の裁量を広く認めている点は、今後、裁判員裁判について訴訟手続きの法令違反を理由とした控訴がなされるであろうことも見据えたものだと思う。

 


 では、どうぞ。

 

 

 


☆☆ 判 決 全 文 ☆☆
【主文】
 原判決を破棄する。本件を広島高等裁判所に差し戻す。
【理由】
■1 弁護人の事件受理申立て理由
 原審弁護人らの所論は、上告受理申立理由書「第4」記載のとおりであるところ、その趣旨は要するに、被告人の検察官調書について、検察官の証拠調べ請求を却下した1審裁判所の手続きは相当であるにもかかわらず、原判決はこれらの調書が強制わいせつ致死、殺人の犯行場所を確定するため取り調べの必要性が高く、検察官及び弁護人にその任意性について主張、立証の機会を与えないまま証拠調べ請求を却下したことに訴訟手続きの法令違反があるとした点において法令解釈を誤ったものであるから、その破棄を求めるというものと解される。そこで検討する。
■2 本件訴訟の経過
 原判決の認定及び記録によれば、本件訴訟の経過等は次のとおりである。
(1)検察官は平成17年12月21日、被告人を強制わいせつ致死、殺人、死体遺棄の罪で起訴したが、強制わいせつ致死、殺人(以下、これらを「本件犯行」という)の犯行場所(以下「本件犯行場所」ともいう)については、起訴状記載の公訴事実において、「アパート201号室の被告人方」としていた。なお検察官作成の平成18年3月10日付け証明予定事実記載書面の「第3 犯行状況等」には、「被告人は、(中略)被害児童をアパート201号室の被告人方に連れ込み、殺害するとともに、わいせつ行為等をした」旨の記載に続いて、「上記一連の過程において、同室内にあった毛布(以下「本件毛布」ともいう)に同児の毛髪が付着した」との記載がされていたが、これを立証する証拠として被告人の供述調書は挙げられていなかった。
(2)検察官は平成18年3月10日、被告人の警察官調書1通(乙3)、検察官調書10通(乙1、2、4~11)の証拠調べを請求したが、乙7~11の立証趣旨は「弁解状況等」であった。弁護人は第5回公判前整理手続き期日(平成18年4月14日)において、これらにつき不同意の意見を述べた。第7回公判前整理手続期日において、争点及び証拠の整理の結果が確認され、検察官は犯行場所に関し、被告人方室内に被害児童を連れ込んだことは室内から領置された毛髪のDNA型が被害児童と同じものであること、室内にあった毛布に人血が付着していることにより推認できると主張した。1審裁判所は被告人の供述調書については採否留保のまま公判を開いた。
(3)被告人は第1回公判の罪状認否で、本件犯行場所に関しアパートの被告人方室内ではない旨を述べ、顕出された公判前整理手続き結果においては、主要な争点のひとつとして本件犯行場所が「被告人方室内」か「アパート1階の階段付近」かが挙げられた。
(4)検察官は第1回公判の冒頭陳述で、被告人はアパート前路上を通りかかった被害児童に声を掛けるなどして被告人方室内に連れ込み、本件犯行に及んだ旨主張するとともに、被告人方室内にあった本件毛布に、被害児童の毛髪や同児のDNA型と被告人のDNA型とが混在した血液が付着したと主張した。弁護人は同公判期日の冒頭陳述で、事件現場はアパート2階の被告人方室内ではなく、アパート北側敷地内の階段下付近であると主張した上で、本件一連の行為が室内ではなく屋外で行われたことは、被告人が当時正常な精神状態ではなかったことを根拠付けるものである旨主張した。なお、同公判期日で取り調べられた証拠によれば、被告人方4.5畳居間の押入れ天袋内から押収された本件毛布には毛髪が付着していたが、その毛根のDNA型検査結果により、上記毛髪は被害児童に由来するものとして矛盾がないこと、本件毛布には人血が付着しており、そのDNA型検査結果により、その人血には同児のDNA型と被告人のDNA型とが混在したものとして矛盾がないことが認められる。
(5)検察官は第4回公判における被告人質問の際、「被告人の平成17年12月18日付け検察官調書には『本件犯行当日、被告人は本件毛布を被告人方から外へは出しておらず、部屋の中に置いていた』旨の供述が記載されているが、取り調べ検察官に対し、そう話したのではないか」との趣旨の質問をした。これに対する被告人の答えは「はっきりとそういうことを言ったことはない」というものであった。また、被告人は第3回、第4回公判期日の被告人質問で「本件犯行当日の午後0時半ごろ、本件毛布を洗濯しようと考え、アパート1階に置いてある洗濯機のところまで持って行ったものの、その洗濯機が小さかったので、無理に洗うと壊れるかもしれないと思い、本件毛布を折り畳んだ状態で洗濯機の左側に置いた。被害児童が死亡した後、本件毛布を広げ、同児を抱き上げてその上に置き、本件毛布で同児を覆った。同児の遺体を遣棄した後、本件毛布を自室で干した」と供述した。
(6)第4回公判で、弁護人は被告人の供述調書の任意性を争う旨の意見を述べ、検察官は主に殺意の存在及び被告人の責任能力を立証するため、被告人の供述調書を取り調べる必要がある旨の意見を述べたところ、1審裁判所は任意性を立証してまで取り調べる必要性はないとして、平成17年12月18日付け検察官調書2通(乙8、11。以下「本件検察官調書」ともいう)を含めて被告人の供述調書の証拠調べ請求を却下した。検察官は被告人の供述調書が本件犯行を立証する上で必要不可欠なものであるなどの理由を述べて異議を申し立てたものの、1審裁判所はこれを棄却した。
(7)検察官は第5回公判で、本件犯行場所につき「アパート201号室の被告人方において」から「アパート及びその付近において」へと訴因変更を請求し、1審裁判所はこれを許可した。
(8)第6回公判で論告及び弁論が行われた。検察官は論告において、本件犯行場所に関し、毛布のような大型の寝具が戸外に持ち出され、通常触れることのない人物の毛髪等を付着させて室内に戻ってくるということは、よほどの事情がない限りはないというべきであって、被告人方室内にあった本件毛布に同児の毛髪等が付着していた事実は、本件殺害行為及びわいせつ行為が被告人方室内で敢行されたことを限りなく指し示す事実とみなければならないと述べるとともに、本件犯行の態様、犯行の時間帯、通行人の存在、アパート階段付近の見通し状況などを指摘して、本件犯行が行われたのは被告人方室内であったと認めるのが相当である旨主張した。そして被告人に死刑を求刑した。これに対し弁護人は、本件犯行場所に関して事件現場がアパート201号室被告人方室内であることについて合理的疑いを超える証明がされたとは到底いえないとし、本件事件現場はアパート201号室被告人方室内ではなく、アパート前の屋外であり、かような場所で本件事件が起きたことは、動機、殺意、わいせつ目的、被告人の責任能力を判断する上で非常に重要な事実である旨を主張した。
(9)1審裁判所は第7回公判で被告人に無期懲役を宣告し、罪となるべき事実において、本件犯行場所を変更後の訴因のとおり「アパート及びその付近」であると認定し、争点に対する判断2(4)イ(ア)において、「被告人が本件殺害行為及び本件わいせつ行為を屋外で行った疑いは払拭できない」と、同2(4)ウ(ア)において、本件犯行は「アパート階段下を含めた敷地内あるいは当時の被告人方室内を含むアパート及びその付近を超えない範囲の場所で行われたものと認めることができるものの、更にそのうちのいずれかを確定することはできないから、その犯行場所については、アパート及びその付近の限度で認定できるにとどまる」と判示した。
(10)これに対し、検察官は量刑不当を理由に、被告人は訴訟手続きの法令違反、事実誤認、法令適用の誤り、量刑不当を理由に、それぞれ控訴を申し立てた。
(11)原審裁判所は第2回公判で、検察官に対し、本件犯行場所に関して検察官の主張は1審判決が認定した「アパート及びその付近において、被害児童に対し1審判示のとおりの強制わいせつに及び、同児を頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した」という漠然とした犯行場所及び犯行態様等を前提としているのか、それとも、本件検察官調書を含む被告人の検察官調書3通(原審検18~20)の証拠調べ請求の理由として検察官が主張している内容からすると、犯行場所や犯行態様等について1審判決が認定した事実よりも、もっと具体化された事実が認定できるということを前提としているとも解されるがどうか、と釈明を求めた。
(12)検察官は第3回公判で要旨、以下のとおり釈明した。「(ア)検察官主張の犯行場所は、論告にあるとおり『被告人方』である。検察官が犯行場所について訴因変更を請求したのは、犯行場所が『被告人方』であることを間接的に証明する証拠でもある被告人の検察官調書の証拠調べ請求が却下され、その裁判所の訴訟指揮などから、裁判所の心証が『実行の着手や実行行為が被告人方外である可能性もあるので確定できない』としているのではないかと考え、『被告人方』と認定されない場合をおもんぱかって念のために犯行場所を『アパート及びその付近において』と拡張したのであり、変更後の訴因においても犯行場所に『被告人方』が含まれることから予備的とはしなかったものである。1審判決は変更後の訴因のとおり、『アパート及びその付近において』としているが、これは犯行場所が『被告人方』であることを否定したものではないことから、事実誤認とはいえず、事実誤認の主張はしなかったものである。したがって、検察官の主張は漠然とした犯行場所を前提としているものではない。(イ)しかし本件は、被告人が被害児童を殺害してわいせつな行為をしようと企て、同児に襲いかかり、わいせつな行為をして殺害したものであり、犯行場所が『被告人方』と認定されようと、それを含む『アパート及びその付近』であると認定されようと、その犯行の動機、態様、手口及び犯情が極めて悪質であることから、量刑に及ぼす情状に何らの軽重はない」
(13)原審裁判所は第4回公判で、検察官主張の量刑不当の主張との関連性及び必要性に乏しいと判断して、検察官請求の原審検18~20の事実取り調べ請求を却下した。
(14)原審裁判所は第5回公判で検察官及び弁護人の各弁論を経て弁論を終結し、第6回公判で判決を宣告したが、その内容は1審判決を破葉し、本件を広島地裁に差し戻すというものであった。
■3 原判決の理由
 原判決の理由の概略は次のとおりである。
 すなわち、「被告人方から押収した本件毛布に被害児童の毛髪及び人血が付着していたと認められることや、被告人質問の際、検察官が被告人の検察官調書に本件犯行当日、被告人が本件毛布を被告人方から外へは出しておらず部屋の中ヘ置いていた旨の供述が記載されている旨発言していたことにかんがみると、本件犯行の場所を確定するために本件検察官調書を取り調べる必要性は高く、そのことは1審裁判所も認識し得たというべきである。しかるに、検察官の立証趣旨の立て方が本件検察官調書の内容を全く反映していないものであったという事情があるにせよ、1審裁判所が『任意性を立証してまで取り調べる必要性はない』という理由で、弁護人に対し任意性を争う具体的事由について釈明を求めず、検察官に対し任意性について立証を行う機会すら与えることなく、本件検察官調書を含む被告人供述調書全部の証拠調べ請求を却下したことは、証拠の必要性についての判断を誤り、合理的な理由なくして不当に証拠調べ請求を却下したといわざるを得ない。この点において1審は審理を尽くしておらず、訴訟手続きに法令の違反があるというべきである。本件が強制わいせつ致死、殺人という重大な事件であること、犯行場所は訴因を構成する重要な要素であること、刑事裁判は事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現すべき使命を負っていること、本件検察官調書を取り調べれば本件犯行場所について真相が解明される可能性が多分にあり、そうすれば、被告人が否認しているとはいえ本件犯行の態様等が相当程度明らかになると思料される。1審裁判所は本件検察官調書を取り調べなかったことにより、本件犯行場所について事実を誤認したのではないかと考えざるを得ず、そうすると、上記訴訟手続きの法令違反が判決に影響を及ぼすことは明らかであるといわざるを得ない。そして審級の利益も考えて、1審において同調書が証拠能力を有するか否か、その証拠調べ請求を却下すべきか否かについての審理を遂げるとともに、その結果に基づいて更に審理を尽くす必要がある」というものである。
■4 当裁判所の判断
 しかしながら、原判決は刑訴法294条、379条、刑訴規則208条の解釈適用を誤ったものであって、刑訴法411条1号により破棄を免れない。その理由は以下のとおりである。
(1)刑事裁判においては関係者、とりわけ被告人の権利保護を全うしつつ事案の真相を解明することが求められるが、平成16年に刑訴法の一部改正が行われ、刑事裁判の充実・迅速化を図るべく公判前整理手続き等(刑訴法316条の2ないし32)、連日的開廷の原則(同法281条の6)が法定され、刑訴規則にも証拠の厳選(刑訴規則189条の2)が定められて、合理的期間内に充実した審理を終えることもこれまで以上に強く求められている。したがって審理のあり方としては、合理的な期間内に充実した審理を行って事案の真相を解明することができるよう、具体的な事件ごとに争点、その解決に必要な事実の認定、そのための証拠の採否を考える必要がある。そしてその際には、重複する証拠その他必要性の乏しい証拠の取り調べを避けるべきことは当然であるが、当事者主義(当事者追行主義)を前提とする以上、当事者が争点とし、あるいは主張、立証しようとする内容を踏まえて、事案の真相の解明に必要な立証が的確になされるようにする必要がある。
(2)これを本件における「犯行場所」の認定、そのために原審裁判所が取り調べの必要があるとした本件検察官調書、その採否を決するために必要な任意性立証の機会の付与等についてみると、確かに1審では犯行場所が被告人方室内か否かが主要な争点の1つとなっていたのであり、このことは訴因が変更されても実質的に変わるものではない。そうすると1審裁判所においては、この点について検察官に対し適宜釈明を求め更に立証を促すこと、特に本件検察官調書には被告人質問における検察官の発問からすると、本件毛布が被告人方室内から持ち出されていない旨の記載があることがうかがえることからすれば、当事者に釈明を求め、検察官に任意性立証の機会を付与するなど、その取り調べに必要な措置を採ることも、選択肢としてはあり得たところではある。
 しかしながら前記■2でみたとおり、本件検察官調書は検察官の証明予定事実記載書面において犯行場所を立証する証拠として挙げられておらず、その立証趣旨も「弁解状況等」であって本件犯行場所の認定にかかわることを掲げるものではなく、1審第4回公判でも、検察官は本件検察官調書を含む被告人の供述調書が、主に殺意の存在及び被告人の責任能力を立証するため、取り調べの必要がある旨の意見を述べたにとどまるものであった。前記(1)で述べたところにかんがみても、このように検察官が立証趣旨としていない事項について、被告人質問における発問内容にまで着目して検察官調書の内容やその証明力を推測して、先に述べたような釈明をしたり任意性立証の機会を付与したりするなどの措置を採るべき義務が1審裁判所にあるとまでいうことはできない。そして、証拠の採否は、事実審裁判所の合理的裁量に属する事柄であるところ、本件訴訟の経過に照らせば被告人の供述調書以外の犯罪事実に関する証拠を取り調べ、被告人質問を実施して一定の心証を形成していた1審裁判所が、本件検察官調書の上記立証趣旨や検察官の意見を考慮し、任意性に関する証拠調べを行ってまで本件検察官調書を取り調べることを考慮する必要はないと判断し、その取り調べ請求を却下したとしても、ただちに訴訟手続きに違法があったということはできない。
 さらに、原審の手続きについてみると、検察官は量刑不当のみを控訴理由とし、事実誤認を理由には控訴申し立てをしておらず、原審における求釈明に対しても「本件犯行場所が『被告人方室内』と認定されようと、それを含む『アパート及びその付近』であると認定されようと、その犯行の動機、態様、手口及び犯情が極めて悪質であることから、量刑に及ぼす情状に何らの軽重はない」旨釈明し、原審において、検察官はもはやその点を解明する必要があるとはしていないものと解される。
(3)以上の訴訟経過からすれば、本件検察官調書の取り調べに関し、1審裁判所に釈明義務を認め、検察官に対し任意性立証の機会を与えなかったことが審理不尽であるとして1審判決を破棄し本件を1審裁判所に差し戻した原判決は、第1次的に1審裁判所の合理的裁量にゆだねられた証拠の採否について、当事者からの主張もないのに前記審理不尽の違法を認めた点において刑訴法294条、379条、刑訴規則208条の解釈適用を誤った違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
 よって弁護人のその余の上告趣意に対する判断を省略して、刑訴法411条1号により原判決を破粟し、同法413条本文に従い本件を原審である広島高裁に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

 


 

 

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A君と記してカネになる? ニュース記事に関連したブログ

2009/10/10 02:24

 

話題のあの本、きょう早朝にようやく読了しました。

 


 もちろん、「A(実名)君を殺して何になる 光市母子殺害事件の陥穽」のことです。弊ブログにアクセス下さっている方ならぴんと来たと思いますが。この本が話題になってからというもの、アクセス数がふだんの何倍にもなってたもんなあ。

 

 

 

 言わずもがな、を承知のうえで一応書き添えておくと、この本は山口県光市の母子殺害事件についてのルポルタージュである。著者の増田美智子さんについては、フクトミなどよりもネットのヘビーユーザーの方のほうが詳しいかもしれない。インターネット新聞JanJanで記者をしていた方だ。今春からは大学の職員で、この事件で殺人や強姦致死などの罪に問われ、広島高裁で死刑判決を受けて上告中の男性被告(28)とは奇しくも同学年になる。

 

 で、本のタイトルだけでなく本文中でも被告を実名で記していることが明らかになって注目を集め、さらには被告(以下、弊ブログでのこれまでの表記にのっとり「少年」と記す)の弁護団が5日に出版差し止めを求めて広島地裁へ仮処分を申し立てたことから、ますます関心が高まることになった。

 


 発売日は8日だったのだけれども、都内の書店では7日から店頭に並び始めたようだ。フクトミがいる大阪ではどうかというと、入荷は未定というところも多かったのだが、ふだんからひいきにしている書店で「お一人さま一部となっております」と念押しされながら7日に予約。8日午後に無事入手して、泊まりキャップ業務が終わった後のきょう9日午前4時ごろから読み始めた。読み終わるとすぐに夕刊キャップ業務に突入。で、夕刊編集作業が終わって一息ついてから、これをしたためている次第である。ノーベル平和賞の発表で中断したりしてますが。

 

 


 さて、少年を実名で記すことにした理由を、増田さんはこう説明している。

 

 「私が実名を書く理由は、匿名報道が彼の人格を理解することを妨げていると思うからだ。名前や顔写真が出ないことで、ひとりの人間とは違う、いわばモンスターのようなイメージがふくらみ、それが死刑を望む世論を形成しているのではないか」


 だが、読み終えても、彼のことを実名で記す必然性はまったく見えてこなかった

 


 といっても、この本の内容のすべてを否定するつもりは毛頭ない。むしろ、よく取材してあることは事実だ。なんか上から目線っぽい書き方だな。そう受け取られてしまうと本意ではないのだが、とにかく惜しみない労力が取材に費やされていると思う。

 

 広島拘置所での少年との面会は25回に及んだという。拘置所での面会取材が、いかに労を要するものであるか、フクトミも分かっているつもりだ。拘置所に足を運んだからといって、相手に会えるとは限らない。そして、会えたとしてもサシでの対面とはいかない。なにより、15分とか20分とかいう面会時間の制限(拘置所によって多少の幅がある)がうとましい。

 

 そして、ざっと思いつく限りの関係者への取材を試みている。1審段階、2審段階、そして現在の弁護人はもちろん、少年の家族や同級生、恩師、そして少年が「犬がある日、可愛い犬と出会った」「ヤクザはツラで逃げ、馬鹿(ジャンキー)は精神病で逃げ、私は環境のせいにして逃げるのだよアケチくん」などと記した、あの手紙の相手の知人とか。被害者遺族である本村洋さんもだ。

 


 ただ、こうした関係者取材に向けた努力の多くは、実を結んでいない。十分な取材ができた相手は、差し戻し控訴審の最終段階で弁護人を解任された今枝仁弁護士(今枝弁護士は本書の解説も執筆している)と、手紙の相手の知人ぐらいだろうか。
 といっても事件が事件なだけに、関係者が、それが少年とより近しい関係であればあるほど、口が重くなるのも当然だろう。

 


 ところで法廷取材のなにが楽かって、傍聴さえできてしまえば、後は関係者が目の前に現れてしゃべってくれるところである。もちろん、こちらに尋問権はないから、聞きたいことすべてが明らかになるわけではないけれども。

 


 それでも、少年本人の肉声と先に挙げた2人へのインタビューというのは、十二分に魅力的な材料である。だが、書き上げられた本に重厚なノンフィクションのようなものを期待すると、肩透かしにあってしまう。
 なんというか、取材過程をその素材のまま投げ出した感じである。投げ出した、という表現はよろしくないな。とにかく、取材を申し込んで断られて押し問答になったり、応じてもらって話を聞いたり、といった過程が、そのまんま記されているのだ。取材で得た材料を再構成し、情景描写や心理描写を織り込むといった形はとられていない。そういう意味で、「ノンフィクション」ではなく「ルポルタージュ」なのだと思う。

 

 ま、言ってみれば、新聞紙上で連載企画をやるときに原稿を最終的にまとめるアンカーが、個別の取材をした記者から受け取る取材メモの体裁に近い。そんなこと言っても、われわれの業界外の人にはよく分からん話だろうけども。

 


 ただ、それが必ずしも悪い方向へ働いているわけでもない。読者が最も読みたいものは、少年が語ったままの肉声であろう。それを伝えるうえでは、素材そのままというのは効果的といえば効果的だ。
 対照的なのは、本村さんの側からこの事件を描いた門田隆将氏の「なぜ君は絶望と闘えたのか 本村洋の3300日」だ。フクトミ、この本も出版されてすぐに読んだのだが、そこに描かれている事実(そしてその事実に至るまでの取材)の圧倒的な重みに敬意は抱きながらも、筆者の本村さんに対する思い入れが強すぎて、事実そのものに曇がかかっているかのような読後感を持った。

 

 

 

 それはさておき、話を「A(実名)君を殺して何になる」に戻すと。

 

 光市事件について本を買ってまで情報を得たいと思っている人の多くは、少年が差し戻し控訴審で供述した内容は果たして真実なのかということを知りたいのではないかと思う。「殺すつもりはなかった」「遺体を姦淫したのは『復活の儀式』だった」といった一連のアレである。そのうえで、彼に極刑を言い渡すことが妥当なのかどうかを考えるのだと思う。

 

 だが、そういった目的でこの本を読むのであれば、まったくの期待外れに終わるに違いない。25回にわたる面会で交わされた少年とのやりとりで、差し戻し控訴審での供述の真偽をただすようなものはない(少なくとも記述されていない)。
 記述は、冒頭の引用で増田さん自らが記しているように「彼の人格を理解すること」のためのものに終始する。だから、多少なりともこの本によって、少年の人となりを知ることはできると思う。

 


 ただ、それが少年を好意的に見る方向へと働くかどうかは、また別だ。

 

 たとえば、少年から増田さんあてに初めて届いた手紙の「ぼくもみっちゃんのこと知りたいなー」という下りは、彼への嫌悪感をいっそう募らせる以外のなにものでもないと思う。なにしろこの手紙が書かれたのは、差し戻し控訴審判決からわずか2週間後のことなのだ。

 

 ま、こうしたことも記述している点が、彼のありのままを伝えているということの担保になるのかもしれないが。

 

 

 

 ただ、繰り返しになるが、彼の実名を出す必然性はまったく見えてこなかった。

 

 確かに、たとえば「少年A」などと表現するよりも、実名で記したほうが記述にリアリティーをもたせることはできるだろう。ただそれは、楽ちんに、ということだ。
 少年法の規定に全面的に賛同するかどうかは措くとしても、法は法である。なんか嫌なオトナみたいな言いぐさだが。その制限のなかで伝えるべきことを伝えるために、われわれはどうにかこうにか足掻くのだ。
 実名を出さなければその人物の実像が伝えられない、というのでは、伝えるための努力を怠ったとのそしりを免れないだろう。

 


 そして、このタイトルである。本文中で実名を記述するだけでなく、タイトルにまで実名を入れるというのはえげつない。事実を伝える努力はともかくとして、決して惜しむことはなかったであろう事実を取材するための努力をも、曇らせるものだと思う。

 

 なんとしてでも訴えたいことがあった。大きな組織をバックにしているわけではない。名の通った大家でもない。そんな若いライターが世に広く伝えるためには、いかなる手段を使ってでも注目を集める必要があった-。

 

 こんなタイトルをつけるなら、いっそこんな風に開き直ってもらったほうがよっぽどすっきりする。
 

 もっといえば、この本のオビには、本村さんの言葉が記載されている。だが、この言葉、増田さんが申し込んだ取材を断る際の発言の一部なのだ。それをあたかも宣伝文句のようにオビに載せるのは、どうかと思う。

 

 

 

 この本、果たして今後はどうなるのだろうか。

 

 たとえば田中真紀子衆院議員の長女の私生活に関する週刊文春の記事をめぐり、発売前日に出版差し止めを求めた仮処分に対し、東京地裁はその日のうちに審尋を行って差し止めの結論を出している。

 

 今回、広島地裁に仮処分が申し立てられたのは発売日の3日前の5日だった。しかし、すでに書いたように本は販売されているし、出版元のインシデンツのホームページには、きょう9日付ですでに在庫がなくなったことが告知されている。

 

 出版差し止めを認めるなら早ければ早いほうがいいにもかかわらず、広島地裁の対応はいかにもゆっくりだ。第1回の審尋が行われるのは13日。ところが出版元側の準備が整わないため、この日は少年の弁護団側だけが意見を述べ、出版元側の意見は19日の第2回審尋で聞くのだという。
 つまり、地裁の判断が示されるのは早くても19日ということだ。そのころには初版の4000部は売り切れていることだろう。

 

 ま、弁護団も出版差し止め命令を発売日前に得ることよりも、仮処分申請によって出版元がとりあえず出荷を中止したり、書店が販売を自粛する効果を期待したのかもしれないが。

 

 

 

 完徹明けの回らないアタマでつらつらと書き記してきたが、最後に。

 


 本のタイトルにも明らかなように、増田さんは少年に死刑が執行されるべきではないと考えている。
 だがそれは、彼の犯罪行為がどういったものであったのかを、差し戻し控訴審での審理がそうであったように、検討した結果ではない。死刑という刑の是非について思いをめぐらせたからでもない。
 「単純に人情から」「実際に会ってしまった以上」、死んでほしくないと思っているのだという。

 

 

 


 

 

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「あなたも裁判員」和歌山編④ ニュース記事に関連したブログ

2009/09/18 00:37

 

今夜は家で寝よう。

 


 山口、和歌山と続いた裁判員裁判の傍聴ツアーが終わり、ようやく昼に大阪へ戻って参りました。でも、判決の言い渡しが終わっても、仕事は終わらないんだよなあ。

 

 さて、「法廷中継 あなたも裁判員に今回もご意見をお寄せいただき、ありがとうございました。

 この企画も4回目となり、判決原稿の出稿を終えたら気がゆるんでしまうという長年の習慣から脱却しつつあります。というか、むしろここからが本番ですからね。

 


 おかげさまで、18日付朝刊(大阪本社発行版)には以下のような記事が掲載されます。

 

 


法廷中継 あなたも裁判員
        和歌山・強盗殺人④

 

 《無期懲役を求刑される強盗殺人の刑罰の重さに驚きました》。和歌山地裁で16日に判決公判が開かれた裁判員裁判で初めての強盗殺人事件。55歳の被告に言い渡された判決は検察側の求刑通り無期懲役だった。「あなたが裁判員ならどのような判決を選ぶか」について読者の意見を募ったところ、43歳の男性から冒頭のようなメールが寄せられた。メールは、こう続く。
 《他の殺人事件に比べ重すぎるように感じました。(全国初の裁判員裁判の)隣人殺害事件では懲役15年でしたが、その差には腑に落ちない部分があります》
 確かに殺人罪の法定刑は「死刑または無期懲役もしくは5年以上の懲役」と実に幅広い。ところが強盗殺人罪になると「死刑または無期懲役」。酌量減軽が認められない限り、弁護側が主張した「懲役25年」という判決はないことになる。
 冒頭の男性は《被告は今まではまじめに暮らしており、盗みはともかく殺意を持ったのは偶発的ではないかと思いました》と弁護側の主張に理解を示し、懲役25年が適当と判断。だが多くの読者は、酌量は認められないという意見だった。
 69歳の女性は《人を殺してまで盗んだ貴金属を売っています。中学卒業後、こつこつと働いた人は大勢います》と死刑を選択。実際にこの事件を傍聴しようとしたが傍聴券の抽選に外れたという和歌山の30代の男性も、《最も許せないのは盗んだ貴金属を換金しただけでなく、その金をパチンコに再投資したこと。更生の余地があるという弁護側の主張は空虚に感じる》と無期懲役を選んだ。
 だが、無期懲役という刑の実態も、一般にはあまり知られていない。絶対に刑務所から出られない終身刑と理解している人もいれば、服役後10年で仮釈放が認められるという刑法の規定から、「実際には10年ほどの軽い刑だ」との誤解もある。しかし法務省の統計によると、昨年1年間に仮釈放が認められたのは4人だけで、その服役期間はいずれも20年を超えている。
 適切な量刑判断に、刑罰に対する正しい理解は欠かせない。最高裁はこうしたことを踏まえ、「『無期懲役の受刑者は10年くらいで出てくる』という風評は誤り」とする裁判員への説明案を作成した。弁護側も同様の説明に力点を置いたが、京都市の36歳の女性はそれも踏まえたうえで、《被告が本当に反省していれば、10年で出て来られる。決して重い刑とは思いません》と無期懲役と判断した。
 裁判員裁判で無期懲役が求刑されたのも、言い渡されたのも初めて。これまでに公判日程が決まった裁判員裁判は50件を超えるが、死刑求刑が予想される事件はまだない。


 

 


 さて、まぶたが重く、頭の中に霞がかかったような状態になってきているので、今回は事務連絡だけでおいとまを。

 


 来週はシルバーウイークで開廷できるのが木、金の2日しかないためか、裁判員裁判はありません。その次の週には4件開かれますが、「法廷中継 あなたも裁判員は行いません。というより、5回目以降の予定は決まっておりません。

 

 今後も続けていくつもりではあるのですが、裁判員裁判も一時のじゅうたん爆撃のような報道は収まり、ちょっと関心が薄れてきているというか飽きられている感があるのでは、と思っています。なんでもかんでも「裁判員裁判では初めて」なんて感じで騒ぎ立てるような段階は過ぎたのでは、ということでもあります。

 

 

 ま、たっぷり眠って頭をクリアにしてから、いろいろ検討したいと思っています。

 

 

 

 

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「あなたも裁判員」和歌山編③ ニュース記事に関連したブログ

2009/09/17 04:03

 

相も変わらず未明の更新です。

 


 さて、裁判員裁判では初めての強盗殺人事件の判決が、きのう16日、和歌山地裁で言い渡されました。結果は、無期懲役。求刑通りですね。

 

 ま、予想通りというかなんというか。きょう17日の朝刊(大阪本社発行版)に掲載される本記原稿は、こんな感じです。

 

 

 


裁判員裁判で初の無期判決
        強盗殺人事件 和歌山地裁

 

 和歌山市六十谷(むそた)の自宅隣に住む女性を殺害し貴金属を奪ったとして、裁判員裁判では初めて強盗殺人などの罪に問われた無職、赤松宗弘被告(55)の判決公判が16日、和歌山地裁で開かれた。成川洋司裁判長は「収入がないのに浪費したあげくの悪質な犯行」として求刑通り無期懲役を言い渡した。弁護側は酌量減軽したうえでの懲役25年が適正としていた。裁判員裁判で無期懲役の宣告は初めて。これまで最も重い判決は東京、青森両地裁の懲役15年だった。
 裁判員6人と補充裁判員2人は閉廷後に全員が記者会見に出席。それぞれ「いい経験になった」「参加してよかった」などと充実感を口にした。しかし「意見はどれぐらい判決に反映されたか」という質問に対しては、地裁の職員が守秘義務に反するとして回答を制止した。
 成川裁判長は判決理由で「殺意は強固で、犯行態様も執拗で残忍」と指摘。一方で被告に有利な事情として、当初は空き巣目的だったことや、被告がこれまで犯罪と無縁の生活を送ってきたことなどを挙げた。
 判決宣告後、成川裁判長は「裁判員、裁判官からのメッセージを伝えます」と前置きし、「今後の人生、現実から逃げることなく、罪を償ってほしい」と説諭した。
 判決によると、赤松被告は5月7日午後、自宅隣の恩知靖子(ひろこ)さん=当時(68)=宅に侵入しネックレスなど約29万円相当を盗んだが、帰宅した恩知さんに発見され、首をタオルなどで絞めて殺害した。


 

 

 

 ついでですから、これまでの裁判員裁判の判決と、検察側、弁護側の量刑意見をまとめておきましょう。以下のようになってます。

 

 判決日   地裁   検察側      弁護側      判決
 08/06  東京   懲役16年    求刑は重い   懲役15年
 08/12  さいたま 懲役6年     猶予判決     懲役4年6月
 09/04  青森   懲役15年    懲役5年     懲役15年
 09/09  神戸   懲役5年     懲役3年     懲役3年
                          猶予4年     保護観察付き猶予4年
 09/09  山口   懲役4年     懲役3年     懲役3年
                          猶予4年     保護観察付き猶予4年
 09/09  大阪   懲役10年    猶予判決     懲役5年
               罰金500万円             罰金350万円
 09/11  さいたま 懲役6年     懲役3年6月   懲役5年
 09/11  福岡   懲役9年      懲役5年     懲役7年
               罰金200万円             罰金200万円
               追徴金764万円           追徴金764万円
 09/16  和歌山  無期懲役      懲役25年    無期懲役

 

 ちなみに東京地裁のケースだけは被害者参加制度が適用され、被害者は「最低でも懲役20年」を求めていました。

 

 

 

 それから裁判員経験者の記者会見のくだりをちょっと補足しておきますと、やっぱりこの質問、聞いたほうがむちゃだと思います。報道・取材の自由の侵害をめぐっては敏感にならざるを得ない同業者としても。ま、どこのメディアからの質問かは、あえて申しませんが。

 


 会見での質疑が守秘義務違反になるかどうかをめぐっては、これまで、さいたま地裁と山口地裁でもひと悶着がありました。
 さいたま地裁では、「裁判長の説諭は、皆さんの思いを代弁した言葉か」という質問に裁判員経験者が順に答えている途中、どう答えるべきか迷った人が裁判所の職員に確認を求めると、職員が首を横に振り、以後、経験者は回答を控えました。
 一方、山口地裁では「判決に保護観察が付いたのは皆さんのどういった気持ちからか」との質問について、会見終了後に裁判所の職員が「回答は守秘義務違反になる可能性がある」と報道の自粛を求め、後に撤回しました。

 

 これらのケースは、どっちもどっちという感じだと思うんですね。
 これらの質問への答えが必ずしも守秘義務違反になるとは限らない。というか、評議の秘密に触れないような回答は十分に可能なわけです。ちょっと裁判所が過敏になってる感じはします。
 でも、質問する側は、相手が趣旨を飲み込めず、守秘義務違反になるような回答をしてしまう可能性があるような質問は避けるべきだと思うんですよ。相手は会見なんかするのは初めてで、おまけに緊張と疲労の極みにあるわけですから。プロとして、ちゃんと趣旨が伝わるような言葉を選んで、あるいは丁寧に言葉を重ねて質問すべきだったと思うわけです。

 


 ところが、和歌山地裁での「あなたの意見はどれぐらい判決に反映されましたか」という質問に、守秘義務違反にならないように答えるのは極めて難しい。実際、裁判所の職員も、「経験者のみなさんも困惑されてますので」といった感じで質疑に割って入ってました。
 この質問を字義通り受け止めて誠実に答えようとすればするほど、評議の秘密に触れざるを得ない。守秘義務違反を避けようとすれば、「みんなで十分に話し合った結果の判決です」なんて、はぐらかすような大人の回答をするしかないでしょう。
 さいたま地裁、山口地裁での質問が、バッターの腰を引かせようとインコースのきわどいところに放った球だとすれば、この質問は、はなからぶつけに行ってます。危険球で即、退場です。

 

 ちなみにこの質問をしたメディアは、その直前にも、「法廷での遺族の方の意見に、どれぐらい影響されましたか」なんて、これまたきわどい球を投げてるんですがね。まったく。受信料支払うのを考えちゃいますわ、なんてね。

 


 さて、最後になっちゃいましたが、本題の「法廷中継 あなたも裁判員の原稿を転載しておきます。なんでか知りませんが、MSN産経ニュースにはアップされてるのに、イザ!には現時点でされてません。

 判決要旨の部分は紙面に掲載したものの6割増し、というか読点や改行をいじったり住所の地番などプライバシーに関する部分を削ったりしたほかは、和歌山地裁提供のペーパーのまんまです。
 慣れない人には読みづらい裁判所特有の悪文なわけですが、裁判員裁判になってもあまりにも従来の判決とスタイルが変わってないことに資料的価値があると判断し、あえてそのままにしました。これまでの裁判員裁判の判決は、わずかながらも変化がみえたんですがねえ。

 

 では、どうぞ。

 

 

 


法廷中継 あなたも裁判員
            和歌山・強盗殺人③

 

《全国で初めて強盗殺人事件を審理する裁判員裁判は3日目の16日、判決公判が開かれた。午前9時半から行われていた最終評議が長引いたため、当初予定されていた午後3時から15分近く遅れて成川洋司裁判長が開廷を告げた》

 

裁判長「被告人は前へ出てください」

 

《被告が証言台に立つと、裁判長は口を開いた》

 

裁判長「主文、被告人を無期懲役に処する。未決勾留日数中70日をその刑に算入する」

 

《裁判長は主文を2回繰り返した後、「以下、理由のあらましを述べます」と前置きして判決理由の朗読を始めた。法壇の裁判員は、じっと被告を見つめ続けている。被告の表情は、傍聴席からはうかがいしれない。朗読を終えた裁判長は被告にこう語りかけた》

 

裁判長「裁判員、裁判官からのメッセージを伝えます。今後の人生、現実から逃げることなく、被害者の冥福を祈って罪を償ってほしい」

 

《裁判長は「よく考えてほしい、ということです」と言葉を補うと、閉廷を告げた》

 

 

☆☆判 決 要 旨☆☆
【主文】
 被告を無期懲役に処する。未決勾留日数中70日をその刑に算入する。
【理由】
■犯罪事実
 被告は空き巣をして金目のものを盗む目的で、平成21年5月7日午後3時半ごろ、和歌山市六十谷の隣人の女性宅に鍵の掛かっていない玄関から侵入し、ネックレスなど16点29万153円相当を盗んだが、帰宅した女性に発見されたので、犯行を隠すため、女性を殺害しようと決意し、午後4時50分ごろ、女性を仰向けに倒してタオルで頸部を絞めつけ、さらに電気コードでも頸部を絞めつけて、その場で女性窒息死させ、もって、正当な理由がないのに他人の住居に侵入したうえ窃盗を行い、罪跡を隠滅するため人を殺害した。
■量刑の理由
 本件は被告が隣家へ空き巣に入り、貴金属を盗んだところ、帰宅した隣人に発見されてしまったため、その場で口封じのため殺害したという住居侵入、強盗殺人の事案である。
 まず、被の告にとって不利に考慮した主な事情は以下のとおりである。
 被告は平成21年4月から仕事がなくなり、そのころから被害者方へ空き巣に入ろうと考えていたところ、本件当日、パチンコで最後の所持金をほぼ使い果たし、所持金に窮したことから犯行を決意したものである。収入がないにもかかわらず、いたずらに浪費したあげく、隣家へ盗みに及んだという本件の経緯に酌むべき点はない。
 被告は空き巣に入るに当たって盗品を入れるための紙袋を用意するなど、ある程度の計画性をもって本件に及んでいるところ、貴金属を盗んだところで被害者に発見されて大声を上げられたため、とっさに捕まりたくない、そのためには被害者に死んでもらわなければならないと考え、強固な殺意のもと、確実に被害者を殺害するために、タオルや電気コードを使って、両手で、あるいは片方の端を足で踏みつけながら合計3回、約20分間にもわたって被害者の首を絞め続けた。このような犯行態様は非常に執拗、残忍で悪質なものと言わなければならない。
 被告は被害者の死亡を確認した後、凶器のタオルと電気コードを現場から持ち去って証拠隠滅をし、その日のうちに盗んだ貴金属を換金して、被害現場には被害者の無惨な遺体が残されたままであるのに、犯行現場に隣接した自宅に戻って通常と同様の日常生活を送り、犯行翌日も、被害者から奪った貴金属を換金して得た現金で平然と買い物やパチンコをしている。その後、テレビで人が殺される映画の場面を見て初めて自己の犯行の罪深さに思いを致し、両親の墓前で犯行を悔いた後も、自分が犯人であると露見する危険を感じるまでは、そのまま日常生活を続けようとしていた。
 さらに、そのような危険を感じるや、どこかへ逃げよう、逃げ切れないのであれば自殺しようと考えて逃亡をはじめている。このように、被告は逮捕に至るまで、自己の犯した責任と向き合うことなく、ただひたすら逃げようとしていたものであって、このような事後の情状は悪い。
 被害者は長年まじめに働いた職場を退職した後、友人らに囲まれて穏やかで充実した日々を送っていたのに、本件により、何の落ち度もなかったにもかかわらず、突然に自宅で襲われ、思いもかけず、その尊い命を無惨にも奪われたのであって、恐怖や無念の思いは察するに余りあり、本件の結果は誠に重大である。遺族の悲しみは深く、当公判廷において悲嘆をあらわにし、被告の死刑を希望すると述べているが、そのように峻烈な処罰感情を抱くことも、本件の態様等に照らせば、至極当然である。
 他方、被告にとって有利に考慮した主な事情は、以下のとおりである。
 被告は逮捕後、犯行につき詳細に供述し、反省の日記や手紙を書き記し、当公判廷においても被告人質問の冒頭、傍聴席に向かって頭を下げて謝罪するとともに、涙ぐんで反省の言葉を述べるなど、逮捕後、被告なりの反省の情を示していると認められる。
 また被告は前科前歴がなく、これまで犯罪と無縁の生活を送っていたもので、その人柄についても、いわゆる凶悪犯といったものとは質を異にする。
 加えて、被告は当初は空き巣ねらいの目的であったもので、この点において、当初から強盗ないし強盗殺人の目的で犯行を敢行した事案に比較すれば犯情は軽いほか、本件被害品を換金した金銭のうち、被告が逮捕当時所持していた約7万円については、すでに遺族に弁償がなされている。
 これらの事情を総合考慮したとき、本件が強盗殺人の事案であり、その法定刑は死刑または無期懲役と定められているが、酌量減軽により有期懲役刑を選択することも可能であることを前提としても、被告に対しては、無期懲役刑をもって臨むのが相当であると判断した。

 

             ◇
 判決について寄せられたご意見は、あすの朝刊で紹介します。


 

 

 

 さて、皆さまのご意見紹介は、次回の更新で。
 

 ただ、今回、寄せられたご意見が非常に少ないです。事件に関心を引くような要素がなかったのか、それとも、裁判員裁判そのものへの関心が薄れてきたのか。いや、この企画そのものが飽きられてきたのか。弊ブログへのアクセスも、これまでの裁判員裁判と比べるとずいぶん少ないしなあ。

 


 

 

 

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続・「あなたも裁判員」和歌山編② ニュース記事に関連したブログ

2009/09/16 07:35

 

和歌山地裁の裁判員裁判の第2回公判、2本目です。

 


 ここで、論告要旨と最終弁論要旨に行く前にちょっと余談を。

 

 やっぱり刑事裁判において、被害者の存在というのは途轍もなく大きいと思うんですね。で、今回の事件でご遺族への検察官の質問が終わった後、裁判長に「弁護人、反対尋問は」と問われたた弁護人は、間髪入れず「ありません」と答えていました。

 

 公訴事実を争っている事件なら、相手が被害者といえど、逐一、反対尋問を加えていかねばならないことは当然あるでしょう。でも認めている事件なら、処罰感情を訴える被害者に弁護人が聞けることってほとんどないでしょう。

 

 だから、弁護人がいたずらに反対尋問を行わなかったことは、個人としての心情としても、裁判員に与える心証を考えた弁護戦術としても、正解だったと思うんです。

 

だが。

 

 その後、裁判所からの質問に移る前の休廷の間、弁護人は速記官になにごとか話しかけながら、笑ってるわけですよ。白い歯を見せてね。ほんの2、3分前まで厳粛な雰囲気だった法廷でですよ。

 

 フクトミ、たぶんイザ!にアクセスしている人たちの中では、かなり弁護士寄りなんだろうなあ、と思う。それでも、弁護士という人たちにしばしば見られるこういう態度には、本当に辟易としてしまう。

 


 フクトミが深い深い畏敬の念を抱いている刑事弁護のスペシャリストがいる。全面否認の無罪主張事件を担当することも多いこの弁護士、たとえば大阪府警の刑事なんかには蛇蝎のごとく忌み嫌われていたりする。「あいつ、被告のためならなんでもしよる。被害者の悲しみなんて考えたこともあらへん」なんて具合ですね。

 

 この人から、こんな話を聞いたことがある。

 

 「被告人の利益のためなら、ご遺族にどれだけ憎まれても構わない。それは、弁護人の職責として当然のことです」

 

ここまでは、刑事弁護の原則そのまんまのよく聞く話。でも、話は続くんである。

 

 「でも、ひとりの人間としての心情は別です。だから私は、人が亡くなられた事件の公判がある日には、絶対に赤のネクタイは締めない。派手なシャツも着ない。それは、人として当たり前のことでしょう?」

 

 なんか、爪のアカ、という言葉が頭に浮かんできたな。以上、余談でした。

 


 では、引き続き増量版「法廷中継 あなたも裁判員和歌山編②のアップを。

 

 

 


☆☆論 告 要 旨☆☆
■はじめに
 本件は被告が被害者の家に入り込んで貴金属を盗んだ後、被害者に見つかったことから口封じのために絞め殺したという住居侵入、強盗殺人事件で、証拠により立証は十分と考える。
■量刑上考慮すべき事情
▽はじめに
 刑法は、物を奪うために人を殺した場合だけでなく、本件のように盗みを発見され口封じのために殺害した場合でも同様に強盗殺人罪が成立し、「死刑または無期懲役」にすると定めている。
 もちろん酌量減軽は可能だが、被告を有期懲役にする理由は全くないと考える。
▽殺意と犯行態様
 被告は20分にわたり被害者の首を絞め続けた。途中、被害者の舌が口から飛び出し、鼻から血が流れているのを見ているにもかかわらず、かわいそうだと思うどころか、とにかく被害者に死んでもらわなければならないとの思いから殺害した。残忍で人間性のかけらすら感じられない犯行だ。
▽結果の重大性
 被害者はごく普通の市民として静かに生活を送っていた。にもかかわらず、最も安心できるはずの自宅に戻ったとき、全く落ち度がないのに被告に襲われ、今後の人生をすべて奪われた。その恐怖心、無念さ、苦痛は想像に余りある。
▽動機
 被告は5月1日に給料を受け取った後、パチンコを繰り返してわずか7日間で使い果たしたあげく、被害者の貴金属を盗んで金に換えようと考えた。
 被告が盗みに入ったのは、本来、生活費に残すべき金を無計画にパチンコで使い果たしたためで自業自得としかいいようがない。
 また窃盗で捕まらないための口封じとして、被害者を殺そうとした動機にも同情の余地はない。
▽遺族の処罰感情
 被告の量刑判断をする際には、死刑にしてほしいとまで考えている遺族の気持ちは十分尊重すべきだ。
▽犯行後の行動
 被告は被害者を殺害した後、遺体を放置したまま盗んだ貴金属を換金して14万円余りを手に入れた。また殺害に使ったタオルや電気コードを捨て、証拠を隠滅した。その後、入手した金をパチンコに使っている。
 パチンコのため金に困って事件を起こしたにもかかわらず、入手した金も再びパチンコにつぎこんでおり、被害者を殺害したことへの反省や後悔の思いも、自らの生活を振り返る姿勢も見受けられない。
▽被告側の事情
 確かに被告にも、被害者を計画的に殺害したわけではなく、前科もないなどの事情が認められる。
▽まとめ
 遺族が望んでいるとはいえ、被告に死刑を求めるのはためらわれる。一方で無期懲役が重すぎるというほどの事情は全くないと考える。
 事件の悪質さを考えると、被告が生涯服役して罪を償うことになっても、刑が重すぎるとは言えない。法定刑から酌量減軽し、有期懲役にするのは適切な量刑ではない。
■求刑
 被告には無期懲役が相当と考える。

 

 


☆☆最 終 弁 論 要 旨☆☆
■前提
 被告は自らが犯した罪の責任をとらねばならないが、弁護人は無期懲役は重すぎ、懲役25年が適正と考える。強盗殺人罪の法定刑は死刑または無期懲役だが、酌量減軽で7~30年の有期懲役とすることもできる。
 無期懲役は文字通り期限のない刑で、更生への意欲が持ちづらい。
 確かに服役後10年が過ぎれば仮釈放の権利が生じるが、だれでも認められるわけではない。平成10年には無期懲役の受刑者は968人で、仮釈放が認められたのは15人、平均服役期間は20年10カ月だった。これが平成20年になると、受刑者数は1711人に増え、仮釈放が認められたのは4人、平均服役期間は28年10カ月となっている。
 無期懲役の受刑者で過去10年に仮釈放されたのは68人だけで、一方で121人が獄死するなど服役期間は年々長期化している。
■酌量減軽すべき事情
 被告の目的は空き巣に入ることで、凶器も準備していない。最終的に空き巣を決断したのは被害者宅の玄関のかぎが掛かっていないことを知ったときで、ガラスを割るバールなども持っていなかった。強盗の計画性はなく、殺意も突発的だった。
 被告は中学卒業後、ここつとまじめに働いてきた。気が小さく、要領も悪くて不器用な人だが、言われた仕事をきちんとこなし、心優しい犯罪とは無縁の人だ。
 仕事がなくなった後も、ハローワークに行くなど何とか仕事を探そうと努力をしていた。生活保護をもらうことは困難で、勤務先が雇用保険に加入していなかったので失業手当ももらえなかった。しかし、働く意欲があり、そのための努力をしていた。このことは更生への意欲にもつながる。
 被告は自殺して命で償おうと黒部に向かい、逮捕された。逮捕後は正直に真実を述べている。また、遺族に謝罪の手紙を書き、毎朝毎晩手を合わせて被害者の冥福を祈るなど、反省の気持ちが日々深まっている。
■適正な刑罰
 現在55歳の被告は、25年後には80歳になる。被告にとって懲役25年の刑は軽くない。
 しかし、刑の終わりが見えていることは更生の意欲、贖罪の気持ちを持ち続けることにつながる。80歳を超えて社会に戻ることのつらさも、被告は耐えなければならない。
 判決に市民の感覚を取り入れることとは、厳しい判決を言い渡すことだけではない。決めていただいた刑を受けるのは抽象的な強盗殺人犯ではなく、いま、ここに座っている被告だ。
 人間は過ちを犯す。だが、一度過ちを犯した人間を永久に社会から追放するのは適当ではない。被告に対し、十分な議論のうえ適正な刑罰をお願いしたい。

 

 

 

            ◇
 検察側は無期懲役、弁護側は懲役25年が相当とした強盗殺人事件。あなたが裁判員ならどのような判決を選ぶか、ご意見を募集します。Eメール(anatamo@sankei-net.co.jp)、またはFAX(06・6633・1940)にお寄せください。


 

 

 

 

 さて、では恒例のお願いを。

 

      anatamo@sankei-net.co.jp

 

 みなさまのメール、上記のアドレスまでお願いいたします

 

 


 

 

 

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「あなたも裁判員」和歌山編② ニュース記事に関連したブログ

2009/09/16 07:24

 

朝だ。まったくさわやかな気持ちではないですが。

 


 ようやく、作業を終えました。「法廷中継 あなたも裁判員の和歌山編、すでに配られたであろうきょう16日付の朝刊(大阪本社発行版)の原稿を増量いたしました。
 今回は、廷内のやりとり詳報は6倍、論告要旨と最終弁論要旨も2.5倍にボリュームアップしてます。その結果、1万字の字数制限を超えるため、2分割でのお届けとなりますが。

 


 では一刻も早く寝たいので、さっそく転載を。まずはいわゆる本記原稿を。

 

 


裁判員裁判 初の無期求刑
     弁護側は懲役25年を主張  和歌山地裁

 

 和歌山市六十谷(むそた)の自宅隣に住む女性を殺害し貴金属を奪ったとして、裁判員裁判では初めて強盗殺人などの罪に問われた無職、赤松宗弘被告(55)の第2回公判が15日、和歌山地裁(成川洋司裁判長)で開かれた。検察側は「口封じのために殺害した動機は身勝手。入手した金でパチンコをするなど反省もみられない」として、裁判員裁判で初めてとなる無期懲役を求刑。これに対し弁護側は「当初は空き巣目的だった突発的な犯行で、被告には更生の余地がある」と懲役25年が適正と主張し、結審した。
 公判では殺害された恩知靖子(ひろこ)さん=当時(68)=のめいへの証人尋問と被告人質問も行われ、6人の裁判員全員が質問した。裁判員はこの後、裁判官とともに判決内容を話し合う最終評議を行い、判決は16日午後に言い渡される。
 赤松被告は弁護側の質問に「盗みに入ったのが見つかり、頭の中が真っ白になって首を絞めた。あのときの自分は普通じゃなかったと思う」と供述。一方で検察側に殺害後、凶器のタオルなどを持って逃げた理由を問われると「自分が殺したのが見つかると思った」と説明した。
 また裁判員からの「被害者が友人と帰宅していたら、いっしょに殺していましたか」との質問には、「謝って逃げていたと思う。1人で帰ってきたので殺害した」と答えた。
 これに先立つ証人尋問で、恩知さんのめいは裁判員に向かい「叔母はもう帰ってこない。死刑をお願いします」と強い処罰感情を訴えた。
 起訴状によると、赤松被告は5月7日午後、自宅隣の恩知さん宅に侵入しネックレスなど約29万円相当を盗んだが、帰宅した恩知さんに発見され、首をタオルなどで絞めて殺害したとされる。


 

 

 

 

続いて、「法廷中継 あなたも裁判員の原稿。

 

 

 


法廷中継 あなたも裁判員
        和歌山・強盗殺人②

 

《全国で初めて強盗殺人事件を審理する裁判員裁判の第2回公判。一足先に赤松宗弘被告が着席して待つ法廷に、15日午前10時1分、成川洋司裁判長らが入廷した》

 

裁判長「それでは開廷します。検察官請求証拠の朗読をお願いします」
検察官「皆さんおはようございます。本日もよろしくお願いします。取り調べる証拠は、証拠番号10番と11番です。時間は10分ほどを予定しています」

 

《10番は被害者の生前の姿を明らかにするための捜査報告書。添付されている被害者の生前の写真が、裁判員らの手元の小型モニターに映し出される。傍聴席から見える大型モニターには表示されない。被告はうつむいたままだ》
《11番は遺族の供述調書。被害者の姉の娘で、この後、証人尋問が予定されている》

 

検察官「叔母は母と仲がよく、遊びに来ていました。とても優しく、明るくて楽しい方でした。昭和49年に母はガンで死亡したのですが、入院の際、付き添って看病してくれました。母が死んだとき、私は中学生だったのですが、心配して励ましてくれました」
検察官「叔母は私や妹に会うと、『私は子供がいないし、あんたらのために何か残してやるわな』と言っていました。冗談だと思っていたのですが、事件の後、警察官の方から叔母の生命保険の受取人が私と妹だと聞かされ、涙があふれ胸がいっぱいになりました」

 

《朗読が終わると、そのめいが入廷し、証人尋問が行われた》

 

検察官「被害者が生命保険の受取人をあなたと妹にしていたことを聞いて、どう思ったか」
めい「驚きと戸惑いを感じた。中学1年のときに母を亡くし、叔母は心配してくれていた。母の代わりに残してくれたのだと思う」
検察官「事件後、生活や気持ちが変わったことは」
めい「おいしいものを食べるときとか、ふと叔母がいれば、と思う。そういうたわいないことで、胸が締めつけられる思いでいっぱいになる」

 

《泣きながら証言するめい。傍聴席の中央2列目でも、遺族とみられる女性2がハンカチで目頭を押さえた》

 

検察官「被告に言いたいことは」
めい「罪を償えば刑は終わるかもしれないが、遺族としてはずっと心の中で持って生きていかなくてはならない。でも、もっとかわいそうなのは叔母」
検察官「事件後、被告の行動を聞いてどう思ったか」
めい「あまりにも短絡的な犯行だと思った。次の日も家で生活をしていたりパチンコを打ったり、人間性を疑うし、考えられない。つつましく生きてきた叔母のところへ物盗りに入り、まして命を奪うなんて許せない」
検察官「被害者に代わって被告に言いたいことは」
めい「もう叔母は帰ってこないが、同じ痛みを味わってもらいたい」
検察官「最後に、裁判員の方々に言いたいことは」
めい「叔母はもう帰ってこないのに、被告は生きています。死刑をお願いします」

 

《弁護側は反対尋問を行わず、10分余り休廷。いったん退廷した被告は再び法廷に戻る際、証言台の前を横切るときに立ち止まってめいに頭を下げた》

 

裁判長「お待たせしました。あらためて開廷します。質問がある方はいらっしゃいますか。それではDの方」

 

《この裁判では、裁判員は向かって左から順にA、B、C…Fと呼ばれることになっている。向かって右から3番目に着席していた裁判員の男性が口を開いた》

 

裁判員D「生前に被害者へしてあげたかったことはありますか」
めい「子供が社会人と大学生になって、これから母にしてやれなかったことを叔母にしてあげたいと思っていました。それがもう、お墓に手を合わせるしかできません」

 

《この裁判で初めての裁判員による質問が終わると、左陪席の女性裁判官が質問した》

 

裁判官「被告が被害者から盗んで売ってしまったものには、もう戻ってこないものもありますが、どう思うか」
めい「叔母が大切にしていたものが、戻ってこないというのが許せない」
裁判官「遺品を売った金があのようにパチンコなどに使われたことは」
めい「叔母はぜいたくしないでこつこつお金を貯めて買ったものだと思う。大切にしまっていたものが、軽い気持ちで好き勝手に使われていたのが腹立たしい」

 

《めいへの証人尋問は午前10時45分に終了。審理は弁護側立証に移った。まず、弁護側請求証拠4点が取り調べられる。弁1号証は「財団法人ひかり協会からの聴取結果について」という警察官作成の報告書。報告書によると、被告は昭和30年に起きた森永ヒ素ミルク事件の被害者で、被害者の救済活動をしている協会に支援を頼んでいたという》
《弁2号証は、被告の兄の警察官調書の抄本。弁護人は内容を読み上げた》

 

弁護人「弟から『人を殺した』と打ち明けられ、ショックで何も考えられない状態でした。弟は『死にたい』と話していましたが、人を殺していても血を分けた兄弟には生きてほしくて自首を勧めました。しかし弟は姿をくらましてしまいました」

 

《3点目の弁4号証は、弁護人が作成した被告の負債の状況についての報告書。被告が借金していた2社のうち、1社分は消滅時効が成立している可能性があり、もう1社分は過払いになっているという》
《最後の弁5号証は遺族への謝罪の状況について、弁護人がまとめた報告書。事件後、遺族3人に手紙を送り、被告が逮捕時に所持していた7万円余りを代理人の口座に振り込んだ。報告書には被告がめいに宛てた謝罪の手紙も添付されており、弁護人はモニターに映し出しながら読み上げた。手紙は便箋1枚と4分の1ほどに、びっしりと細かい字で綴られていた》

 

弁護人「私は人間として、してはいけないことをしてしまいました。自分のしてしまったことを考えると、何度も自殺しようと思いました。本当に申し訳ありません」

 

《弁号証の取り調べが終わると、被告とは同郷で、以前雇い主だった男性が弁護側の証人として出廷した》

 

弁護人「被告の性格は」
証人「まじめでおとなしくて温厚で、怒ったところを一度も見たことがない」
弁護人「被告が森永ヒ素ミルク事件の被害者だと聞いたことはあるか」
証人「被告の両親から聞いていた。他の子供と食らえると虚弱で、目が悪いのもそのせいだと」
弁護人「あなたからみてヒ素ミルク事件の影響と思えたことはあるか」
証人「何をするにもスローテンポで、ものの理解が人よりやや劣るところがあった」
弁護人「被告はどれぐらい、あなたのところで働いていたのか」
証人「30年ぐらい前から14~15年間」
弁護人「被告の仕事ぶりは」
証人「昔からスローテンポで覚えが悪いが、まじめにこつこつやるのでかわいがっていた」
弁護人「今回の事件の前に被告と会ったか」
証人「4月中頃に会った。仕事がないと言っていたので紹介したが、結局、断りの電話があった」
弁護人「被告から事件のことを打ち明けられたときのことを。事件のことはどうやって知ったか」
証人「新聞で殺人事件があったと読んで、被告が住んでいるところなので様子を見に行った」
弁護人「被告宅に行ってどうしたのか」
証人「同居している男性が被告と電話していたので、電話を代わってもらったら、事件のことを打ち明けられた」
弁護人「これからの行動について何か話をしたか」
証人「自首するよう説得したが、被告は興奮して自殺すると言ってきかなかった。それなら逮捕して反省してもらったほうがいいと近くの交番に行った」
弁護人「事件の原因は何だと思うか」
証人「人を雇用する人は、ある程度の生活を保障する義務がある。被告の雇い主がひと言、『もうじき仕事が出るからがんばれ』と言っていれば、事件は起きなかったかもしれない」

 

《続いて検察官による反対尋問》

 

検察官「被告から『仕事がなくて困っている』と言われて、すぐに山仕事を手伝うように言ったのか」
証人「はい」
検察官「山仕事をしていれば、被告は食べていくのには困らなかったか」
証人「そう思う」
検察官「なのに被告は断ったのか」
証人「はい」

 

《被告は証言の間、ずっとうつむいている。5分ほどの休廷の後、一番左に着席している裁判員の男性が質問した》

 

裁判員A「事件現場に行ったのは、ニュースか新聞を見たからですか」
証人「はい」
裁判員A「同居男性や被告から連絡があったからではないんですか」
証人「違います」
裁判員A「野次馬として訪ねていったのですね」
証人「はい」

 

《さらに裁判長、弁護人が質問。すると裁判員Dの男性が「すみません」と切り出した》

 

裁判長「ではどうぞ」
裁判員D「山仕事をする場合、被告はどこで寝泊まりするのですか」

 

《証人はやや耳が遠く、裁判長も助け船を出して、仕事は通いですることが確認された。尋問は午前11時55分に終わり、昼の休廷に。証人は法廷を出る際、被告に近寄り、刑務官がとどめようとするのに構わず被告の手を握りしめた》
《公判は午後1時15分に再開され、被告人質問が始まった。弁護人は冒頭、検察側請求証拠に添付されていた被害者の遺体の写真を被告に示して尋ねた》

 

弁護人「写真を見てあらためてどう思うか」
被告「申し訳ない気持ちでいっぱいです」
弁護人「ご遺族には」
被告「申し訳ない気持ちで胸が痛みます。いま謝りたいです」

 

《被告は立ち上がると、傍聴席の遺族に「申し訳ありませんでした」と頭を下げた》

 

弁護人「事件の原因は何だったのか」
被告「仕事がないからパチンコに金を使って、それで被害者の家に盗みに入った」
弁護人「被害者に何か責任はあるか」
被告「いいえ。自分勝手な行動だった。申し訳ない気持ちで、深く反省している。服役して、自分の人生を償っていきたいと思っている」

 

《弁護人は被告の生い立ちからふだんの生活状況へと質問を進めていく》

 

弁護人「仕事をしていたころは、パチンコにはどれぐらいの頻度で行っていたのか」
被告「多いときで週に4回。平均では週2回ぐらい」
弁護人「3月末で仕事がなくなることは前もって分かっていたのか」
被告「いいえ」
弁護人「なぜ仕事がなくなったのか」
被告「親方が現場の監督とけんかになったから」
弁護人「3月末にもらった2月分の給料はいくらだったか」
被告「15万円ぐらい」
弁護人「4月はパチンコにどれぐらい使ったのか」
被告「3万そこそこだと思う」
弁護人「給料がなくなったのはいつごろか」
被告「4月末ぐらい」
弁護人「そのころには定額給付金も入ってきたと思うが、何に使ったのか」
被告「おかず諸々を買って、残りはパチンコ」
弁護人「5月1日にもらった最後の給料はいくらだったか」
被告「12万円」
弁護人「それはどうしたのか」
被告「家賃とかを払うと残りは6万円ぐらいだったが、それで何とか切り抜けようと思っていた」
弁護人「でも何に使ったのか」
被告「パチンコに使った。仕事がなくて家ですることがなかったので、なんとなくパチンコに行ってしまった。負けているうちに意地になって、最後は数十円しかなくなってしまった」

 

《結局、被告は行き当たりばったりで被害者宅に盗みに入り、発見されると首を絞めて殺害してしまう》

 

弁護人「逮捕から4カ月、あのときの自分を振り返ってどういう人間だと思うか」
被告「普通じゃないと思う」
弁護人「被害者に対しては」
被告「今は申し訳ないとしか言えない」
弁護人「今、涙をふいたが、どういう気持ちか」
被告「被害者の顔を思い出したら涙が出てきた」
弁護人「昨日からよく涙を出しているが、どういう気持ちからか」
被告「うまく表現できないが、気持ちが昂ぶってきて、自分が首を絞めているときの被害者の顔が浮かんできて、申し訳ないと」
弁護人「事件後は平気な顔で奪った貴金属を金に換えたが、次の日は何をしたか」
被告「安全靴を買って、パチンコをした」
弁護人「パチンコで金を使いすぎてこういうことになって、いわば被害者の代わりの金をまたパチンコに使うとはどういうことか」
被告「何もかも忘れたいと思った。気を紛らわせようとしたし、金を持った勢いというか、ほっとしていた」
弁護人「犯行後、罪の意識が芽生えたきっかけは」
被告「9日、テレビで洋画を見ていて殺人のシーンがあった。それで被害者の顔が浮かんできて、目覚めたというか本当の自分に返った」
弁護人「それでどうしたのか」
被告「故郷の親の墓に行って報告した。責任をとって自殺しようとも思った」
弁護人「そのころ被害者の遺体が発見されたことを知っていたか」
被告「知らなかった。和歌山市に戻ると大騒ぎになっていた」
弁護人「なぜ自首しなかったのか」
被告「勇気がなかった」
弁護人「それからどうしたのか」
被告「近所の人はみんな指紋を採られると噂で聞いて、捕まると思い、兄に相談しようと大阪に行った」
弁護人「何を持って出かけたのか」
被告「自殺用のロープ」
弁護人「兄にはどう話したのか」
被告「被害者を殺したことを報告した。自殺しようと思っていることも伝えた」
弁護人「兄はどう言っていたか」
被告「自首しろと言われた」
弁護人「なぜ言うことをきかなかったのか」
被告「あまり真剣に話を聞いてくれた感じがしなかったから」
弁護人「それからなぜ兄の家を出たのか」
被告「死ぬしかないと思い、始発電車で新大阪に出て、それから富山行きの電車に乗った」
弁護人「途中で同居していた男性に電話したのか」
被告「黒部で死ぬと伝えた」
弁護人「そういうことを言う必要はなかったのでは」
被告「警察につかまえてほしいという気持ちがあった」
弁護人「黒部駅に着いたときの様子は」
被告「警察官が4人ぐらいいた。『署に来てもらえるか』と言われ、ほっとした」

 

《10分ほどの休廷をはさみ、弁護人の質問が再開される》

 

弁護人「被害者に申し訳ないという気持ちに偽りはないか」
被告「はい」
弁護人「そのために何をしているか」
被告「毎日朝と寝る前の2回、北を向いて供養のために手を合わせている。死ぬまで背中に被害者の方を背負って、やっていきたい」
弁護人「今、どんな後悔があるか」
被告「頭を下げてでも借金しておけば、大それたことをしなくてすんだ」
弁護人「パチンコに行ったことについては」
被告「パチンコに行かずに、家でじっとしていればよかった」
弁護人「空き巣に入って、その後はどうすればよかったか」
被告「(殺さずに)逃げればよかった」
弁護人「逃げる以外に」
被告「逃げずに謝っておけばよかった」
弁護人「そうする勇気がなかったのか」
被告「はい」
弁護人「今後、人を殺めたことから解放されることはあるか」
被告「死ぬまでないと思う」
弁護人「被害者の顔を忘れていいか」
被告「はい」
弁護人「忘れていいのか」
被告「いいえ。忘れません」

 

《弁護側の質問は午後2時40分すぎにひとまず終了。検察官の反対尋問が始まる》

 

検察官「親方に借金したことはあるか」
被告「1万、2万とかならある」
検察官「何のためか」
被告「めしを食うため。パチンコに負けたから」
検察官「結局、パチンコに負けたからではないのか」
被告「はい」
検察官「4月の収入から生活費を引くと、12万円になる。これはどこに消えたのか」
被告「たぶんパチンコだと思う」
検察官「先ほど弁護人には4月にパチンコに使ったのは3万円と答えていたが、なぜ全く違うのか」
被告「頭が混乱し、自分でも何をしゃべっているのか分からなかった」
検察官「以前、収入が多かったころに、借金をまとめて返済するとか貯金するとかしなかったのか」
被告「しなかった」
検察官「その場その場で生きてきたのか」
被告「はい。ただ漠然と生きてきた」
検察官「仕事がなくなって4月は不安だと言いながら、4月にお金がかかることをしていないか」
被告「…」
検察官「映画を見たいと、ケーブルテレビの申し込みをしていないか」
被告「した」

 

《厳しい口調で矢継ぎ早に質問を繰り出す検察官。被告はしだいに歯切れが悪くなっていく》

 

検察官「4月の段階で手元の金はなくなっていたのか」
被告「はい」
検察官「5月1日に給料が12万円入って、7日まで毎日パチンコをしていたのか」
被告「はい」
検察官「一番負けたのは」
被告「5日に5万円負けた」
検察官「事件のことについて。首にタオルを巻き付けて引っ張ったとき、被害者は大声を上げている。この段階でやめることもできたはずだか」
被告「必死だったのでやめられなかった」
検察官「被害者が鼻から血を出し、口から舌を出しているのを見てもやめようと思わなかったのか」
被告「何も考えられなかった」
検察官「頭の中が真っ白だったというが、失神した被害者を玄関から見えないように奥の部屋に連れて行っている。冷静に判断していたのではないか」
被告「とにかく死んでもらわなければの1点だけだった」
検察官「必死で何も考えられなかったというが、最後に被害者が息をしているかどうかを確認したのはなぜか」
被告「あのときは普通の人間じゃなかったのでできたと思う」
検察官「殺害後、凶器のタオルと電気コードを持ち出したのは」
被告「自分が殺したのが見つかると思った」
検察官「その日のうちに奪った貴金属を換金し、帰宅してからは好きなドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』を見たのか」
被告「はい」
検察官「ストーリーは頭に入ったか」
被告「普通に見ていた」
検察官「次の日はパチンコをしたのか」
被告「はい」
検察官「その後、死のうと思った後にも、またパチンコをしていないか」
被告「はい。大阪で兄と会ったときにした」
検察官「被害者から奪った金でパチンコをして、どう思ったのか」
被告「兄を少しでも遊ばせてやろうと、被害者のことは忘れていた」
検察官「逃げた後も死のうと思いながら、今までと同じ行動をしている。本当に反省しているのか」
被告「反省している」
検察官「ではなぜ、大阪でパチンコをしたのか」
被告「兄に会って天狗になっていた。5年ぶりに会って嬉しかったし、これが最後になるかもしれないとも思っていた」

 

《ここで検察官が裁判長に休廷を求めた。予定より進行が遅れているためか、裁判長は「再開後、検察側、弁護側双方とも質問してもらって構いませんが、論告は午後3時35分からという予定は動かせませんので」と前置きし、午後3時5分に休廷を告げた》
《10分ほど後、審理再開。再び検察官が質問する》

 

検察官「警察につかまってほっとしたというのは、どういう意味か」
被告「悪いことをしたので、罪を償えるな、と。被害者を殺したことで…。ちょっとすみません」
検察官「死ななくてもいいとか、もう逃げなくていいとかという気持ちではないのか」
被告「そんなことはない」

 

《この事件では被害者参加制度は適用されていないが、検察官は休廷の間、傍聴していた遺族が疑問に思った点を確認し、あらためて質問したという。続いて弁護側の再主尋問》

 

弁護人「ここ1、2年、親方から給料を前借りしたことは」
被告「ない。親方も長い付き合いなので、貸せばまたパチンコに使うと分かっていて貸してくれない」
弁護人「借金してまでパチンコをしたことはないということか」
被告「はい」

 

《弁護側、検察側の質問が終わり、裁判員が次々と疑問点をただしていく》

 

裁判員A「お兄さんと会ってパチンコをしたのは、事件のことを話した後のことですか」
被告「はい。兄に全部話した後、『パチンコでもするか』ということになった。兄は金を持っているかと思ったら、店内をうろうろするだけなので、千円渡した。自分も兄が打っているのを待つだけでは変なので、スロットをした」
裁判員A「被害者の方がもし友人と帰ってきていたら、いっしょに殺していましたか」
被告「いいえ」
裁判員A「謝って逃げていましたか」
被告「はい」
裁判員A「1人で帰ってきたので、殺したということですか」
被告「はい」
裁判員C「富山でつかまってほっとしたというのは、つかまえてほしかったからですか」
被告「はい」
裁判員C「自首するのとはまた違うのですか」
被告「自首する勇気がなかった。だから、同居していた男性が警察に言うだろうと電話した」
裁判員E「事件当日の7日から墓参りに行った9日まで自宅で寝泊まりしていますね。その間、隣には被害者の遺体があるのに、どんな気持ちでしたか」
被告「怖かったが、同居している男性に気づかれないようにするので精いっぱいだった」
裁判員F「被害者の方が貴金属を持っていると聞いたのはいつごろのことですか」
被告「10年ぐらい前」
裁判員F「聞いていなかったら、空き巣には入っていませんでしたか」
被告「入っていなかったと思う」
裁判員B「ここ数年仕事がないときもあったということですが、そのときはどうしていたのですか」
被告「友達もいたので、友達の家にいた。でもここしばらくは給料も減ったので、友達とも疎遠になっていた。会ってコーヒーを飲んだりすることもなくなったので。パチンコが友達になっていた」

 

裁判員が質問を終えると、3人の裁判官も順に質問していく。最後は裁判長だった》

 

裁判長「両親の墓の前で謝罪したというのは、誰に対しての謝罪か」
被告「母親と被害者の方」
裁判長「それ以前には、被害者には謝っていなかったのか」
被告「自分が自分でないようで、ドラマを見ているようだった」

 

《午後3時40分すぎに被告人質問は終了した》

 

裁判長「では採否未了の検察官請求証拠について。検察官、どうされますか」
検察官「いずれも撤回します」

 

《休廷をはさまず、そのまま検察側の論告と弁護側の最終弁論が行われる。最後に被告が書面を手に、最終意見陳述を行った》

 

被告「陳謝いたします。今回、このような大それた事件を起こしたことを後悔しています。謝っても決して許されるものでもありません。心から深く深く反省しています」

 

《裁判長は判決期日を16日午後3時に指定し、午後4時50分に閉廷した》


 

 

 

 

 じゃ、このエントリではここまで。

 

 

 

 

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「あなたも裁判員」和歌山編① ニュース記事に関連したブログ

2009/09/15 04:26

 

さすがにこの時間にもなると疲れてるので、手短に。


 

 予告通り、「法廷中継 あなたも裁判員の和歌山編スタートです。さっそく、きょう15日に配られる朝刊(大阪本社発行版)掲載の原稿を転載します。

 

 …と、それだけならば、こんな時間にはなりません。
 実は今回の「法廷中継 あなたも裁判員は、過去3回に比べ、ちょっと行数が短くなってます。きのう14日は、昨年10月に起きた大阪市浪速区の個室ビデオ店放火事件の初公判も大阪地裁で開かれ、その冒頭陳述要旨も同じページに掲載することになったからです。

 

 で、MSN産経ニュースやイザ!にも、紙面掲載のものと同じものがアップされてますが、弊ブログにアップするにあたって大幅に増量しました。廷内のやりとり詳報は2.5倍、検察側の冒頭陳述要旨はなんと5倍以上、弁護側の冒頭陳述要旨も4倍近くに増やしてます。そんで、時間がかかっちゃった訳です。正直言うと、ホテルに戻って2時間近くうたた寝してましたが。

 


では、どうぞ。まずは紙面掲載の、いわゆる本記原稿からです。

 

 

 


裁判員 初の強殺審理
     和歌山地裁 被告、起訴内容認める

 

 和歌山市六十谷(むそた)の自宅隣に住む女性を殺害し貴金属を奪ったとして、強盗殺人などの罪に問われた無職、赤松宗弘被告(55)の初公判が14日午後、和歌山地裁(成川洋司裁判長)で開かれ、罪状認否で被告は起訴内容を認めた。法定刑が死刑または無期懲役の強盗殺人罪が裁判員裁判で審理されるのは初めてで、量刑が焦点となる。判決は16日午後に言い渡される。
 14日午前の選任手続きで選ばれた裁判員は男性5人、女性1人。補充裁判員は男女1人ずつだった。この日は被告の元同僚で同居していた男性への証人尋問も行われたが、裁判員からの質問はなかった。
 検察側は冒頭陳述で、パチンコで給料を使い切ってしまい金に困った末の犯行で、動機に同情すべき点はないと主張。奪った貴金属を売った金でパチンコをするなど、犯行後の態度も悪いとした。
 これに対し弁護側は、被告は配管工などとしてまじめに働いており、仕事がなくなったのは被告の責任ではないと指摘。さらに犯行は盗みに入ったのを見つかったための突発的なものだとして情状酌量を求めた。
 起訴状によると、赤松被告は5月7日午後、自宅隣の無職、恩知靖子(ひろこ)さん=当時(68)=宅に侵入しネックレスなど約29万円相当を盗んだが、帰宅した恩知さんに発見され、首をタオルなどで絞めて殺害したとされる。
 地裁は7月、候補者69人に呼出状を送付。このうち28人に辞退が認められるなどし、うち1人は過去に禁固以上の刑を受けていたため裁判員の欠格事由にあたることが判明した。このため午前9時半から行われた選任手続きに出席義務があったのは41人で、約90%に当たる37人が参加した。


 

 


 続いて、増量版「法廷中継 あなたも裁判員です。

 

 


法廷中継 あなたも裁判員
            和歌山・強盗殺人①

 


《強盗殺人事件の裁判員裁判が開かれる和歌山地裁101号法廷。14日午後1時28分、赤松宗弘被告が刑務官とともに法廷に入った。白い半袖シャツに黒のズボン姿。眼鏡をかけ、足下は革靴に見えるサンダルを履いている。弁護人と並んで座り、手錠が外されると、成川洋司裁判長を先頭に裁判官と裁判員が入廷。男性5人、女性1人の裁判員はスーツ姿の人もいればカジュアルな服装の人も。開廷を告げた裁判長は検察官に起訴状の朗読を促した》
《起訴状によると、被告は5月7日午後、自宅隣の女性宅に侵入しネックレスなど約29万円相当を盗んだが、帰宅した女性に発見され、首をタオルなどで絞めて殺害したとされる》

 

裁判長「起訴状の内容に間違いはありますか」
被告「間違いありません」

 

《罪状認否が終わると、女性検察官が検察官席を出て譜面台に書面を置き、冒頭陳述を始めた。モニターにも要点を表示し、裁判員に語り掛けるような口調で説明を進めていく。被害者を殺害した状況に移ると、じっとうつむいていた被告が鼻をすすり始めた。検察側の冒頭陳述は25分ほどで終了した》

 

裁判長「分からないところや、説明してほしいことはありますか」

 

《裁判長は、裁判員に疑問点がないことを確認すると、弁護側に冒頭陳述を促した。証言台に立ち、身振りを交えながら情状酌量を訴える主任弁護人。20分余りで冒頭陳述を終えると、法壇に向け一礼して弁護人席に戻った。裁判長は公判前整理手続きの結果を説明した後、午後2時40分まで15分の休廷をとった》
《審理再開後、検察側請求証拠のうち甲号証6点が取り調べられた。1点目は、事件現場の状況や遺体発見時の状況についての捜査報告書。検察官はモニターに被害者宅の写真や間取り図を映し出しながら説明を加えていく》

 

裁判長「あ、それは『恩地』ではなく『恩知』ですね」
検察官「すみません。訂正します」

 

《図面に記された被害者の名前の間違いを裁判長が指摘すると、緊張した様子だった裁判員の表情がかすかにほころんだ。しかし、しかし、その直後、廷内の雰囲気は一変する》

 

検察官「ご覧になりたくない方もいらっしゃるかもしれません。しかし重要な証拠です。検察官としては、ぜひみていただきたいと考えています」

 

《検察官はこう前置きすると、傍聴席から見える大型モニターの電源を切り、裁判員らの手元の小型モニターに被害者の遺体の写真が映し出した。女性の裁判員はハンカチを口元に当て眉根を寄せた》
《2点目は、被告が被害者宅から盗んだのはネックレスやリングなど16点、計29万153円相当だったことを示す捜査報告書。3点目は凶器となったタオルそのもの。検察官が裁判員に広げて示したタオルには、付着物を鑑定するために切り取った穴がところどころに空いていた。4点目の電気コードも、裁判員に示された》
《5点目は被害者の死体検案書。6点目は被害者の友人の供述調書で、事件当日、老人クラブのカラオケ大会が終わった後、被害者と立ち話をして別れた状況が読み上げられた》
《午後3時6分、証拠調べを終えると、そのまま休廷をはさまずに被告の元同僚で、事件までは同居していた男性の証人尋問。検察官は被告の生活状況を問いただしていく》

 

検察官「被告が逮捕されるまで、7年間いっしょに生活していたのか」
証人「はい」
検察官「家賃はどうしていたのか」
証人「2人で半割りにしていた」
検察官「家賃と光熱費で1人あたま月にどれぐらい必要だったのか」
証人「4万円ぐらい」
検察官「5月末の給料はなく、それで6月末まで過ごせると思ったか」
証人「食費を節約してぜいたくなものを食べず、娯楽にもお金を使わなければ乗り切れると思った。被告にもそう話した」
検察官「娯楽についても被告に注意したのか」
証人「土日が休みのときにはパチンコに2回行くのを、1回にしてなんとか生活をやり抜こうと話した」
検察官「それであなたは6月末まで生活できたのか」
証人「はい」
検察官「あなたの忠告を守っていれば、被告も6月末まで生活できたか」
証人「たぶんそうだと思う」

 

《質問が弁護側に代わる》

 

弁護人「被告はどのような性格か」
証人「人当たりがよくて、頼まれたら嫌とよう言わん性格。けんかなんかもしたことがない」
弁護人「4月に仕事がなくなったのはなぜか」
証人「社長と親方がけんかしたから」
弁護人「けんかに被告は関係しているのか」
証人「いいえ」
弁護人「失業保険は」
証人「ない」
弁護人「勤務先は雇用保険を掛けていなかったのか」
証人「はい」
弁護人「被告の生活は派手ではなかったか」
証人「派手ではない」
弁護人「被告が仕事をさぼってパチンコをしたことは」
証人「それはない」
弁護人「事件後、被告を疑ったか」
証人「全く。いつもにこにこして人当たりもいいし、けんかもしたことがないので」
弁護人「被告が犯人だと知ったのはいつか」
証人「5月10日夜の電話で。『自分が殺したんや』と切羽詰まったような声だった。『富山に行って死ぬんや』とも言っていた」
弁護人「被告は冗談を言っていると思ったか」
証人「本当に死ぬつもりだと感じた」
弁護人「それでどうしたのか」
証人「死ぬことがないように保護してもらおうと、交番に行った」
弁護人「面会に行ったときの被告の様子は」
証人「泣きじゃくって、話をできる状態ではなかった」

 

《肩を落とし、うつむいていた被告は眼鏡を外し、涙をぬぐった。弁護側の質問が終わると、午後3時50分すぎにいったん休廷。法廷に戻った裁判長が口を開く》

 

裁判長「質問はございますか。…。よろしいですか」

 

《裁判長は左右の裁判員を見やるが、裁判員からの質問はないまま午後4時6分、証人尋問は終了。その後は検察官が、証拠採用された被告の供述調書を朗読した》

 

検察官「私は7男の末っ子として生まれましたが、いまは兄弟は2人だけです。家や車などの資産はなく、貯金もありません。収入はいまはありませんが、以前は多いときは17万円ぐらい、少ないときは10万円ぐらいありました」

 

《1点目は被告の身上経歴に関する調書。続く2点目では、犯行に至る経緯や犯行状況が供述されていた》

 

検察官「事件当日の5月7日午後には所持金が数十円しかありませんでした。11日にはまた働けると親方から聞いていましたし、給料を前借りしたり同居していた男性から借金すれば、生活できると思いました。しかし、2人とも私が1日に給料をもらったことを知っています。肩身の狭い思いまでして借りたくないと、盗みに入ることを決意しました」

 

《3点目は被害者との関係についての供述調書。最後に被告の戸籍謄本が調べられ、午後4時40分すぎに閉廷した》

 

 

 

☆☆検 察 側 冒 頭 陳 述 要 旨☆☆
■事件のあらまし
 本件は一人暮らしだった68歳の被害者が隣に住む被告に盗みに入られ、貴金属16点を奪われて殺されたという住居侵入、強盗殺人事件だ。起訴内容に争いはなく、量刑が問題となる。
■被害者との関係
▽被告について
 被告は事件当時54歳で、中学卒業後、工員や配管工などとして働いた。独身で、勤務先の同僚である男性と同居していた。また、被害者が貴金属を持っていると噂で聞いていた。
▽被害者について
 被害者は事件当時68歳だった。独身で、二軒続きの長屋の、被告の南側の家に一人で暮らしていた。以前はデパート店員として働いていたが、現在は年金生活で、老人クラブではカラオケを楽しんでいた。
▽被告と被害者との関係
 被告と被害者は同じ長屋に住んでいたが、特に親しい関係ではなく、会ったら挨拶する程度の顔見知りだった。2人の間にトラブルはなかった。
■犯行に至る経緯
▽被告の仕事・収入
 被告と同僚の男性はともに平成21年3月31日まで配管工として仕事をしていた。しかし、4月からは親方の都合で仕事をしておらず、5月11日から再び同じ親方のところで働くことになっていた。
 給料は2月分約15万円が3月末に、3月分の12万円余りは1日遅れで5月1日に支払われた。被告たちは4月には仕事をしていなかったので、5月末に給料が支払われる見込みはなかったが、5月11日以降に働いた分の給料は6月末に支払われる見込みだった。
▽被告の借金と支出
 被告には消費者金融などに約30万円の借金があり、1カ月当たり1万円を返済することになっていた。被告と同僚の男性が、食費を除いた家賃や光熱費などの生活費として必要としていたのは1人1カ月当たり4万円程度で、4月から5月上旬にかけて仕事がなかったとしても、生活は十分可能だった。
▽お金に困るようになった経緯
 被告は3月末には給料約15万円を受け取った。その後、4月には同僚の男性から、節約すれば4月末に受け取る給料とあわせて6月末までは生活できるから、無駄遣いしないように注意を受けた。しかし被告は4月のうちに、3月末にもらった給料をパチンコで使い果たしてしまった。
 被告は被害者が貴金属をたくさん持っているという噂を聞いていた。しかも被害者が年配の一人暮らしで、盗みに入ったのがばれても自分のほうが力が強く、何とでもなるという気持ちを持っていた。そこで4月のうちには被害者の家に盗みに入ろうと玄関の戸を開けることができないか何度か確かめた。しかし鍵がかかっていたため入ることができなかった。
 被告は5月1日、1日遅れで3月分の給料約12万円の支払いを受けたが、これもパチンコにつぎ込んだため、5月7日の事件直前には所持金は数十円になっていた。
 被告は同僚の男性や親方に借金して生活することもできると考えたが、借金を申し込むと給料をパチンコで使い果たしたことについて小言を言われると思い、被害者の家から貴金属を盗もうと決心した。
■犯行状況
 被害者は5月7日午後1時ごろから4時ごろまで、公民館で行われた老人クラブのカラオケ大会に参加していた。
 一方、被告は午後3時半ごろ、盗んだ貴金属を入れる紙袋を持って被害者宅に行った。被害者が留守で鍵もかかっていなかったため、被告は玄関から室内に入り、タンスの引き出しなどを開けて貴金属16点、29万153円相当を盗んだ。
 被告が盗みを終えた後の午後4時50分ごろ、被害者が帰宅した。被告はしゃがみこんで隠れたが、被害者に気づかれ、大声で悲鳴を上げられた。
 被告は隠れていたときはすきを見て逃げようと考えていたが、顔見知りの被害者と目があったことから、口封じのため殺すしかないと決心した。そこで床に置かれていたタオルを手に取り、被害者の首に巻き付けて絞めつけた。
 被告は「ぎゃー」という叫び声を上げた被害者をあおむけに転倒させ、タオルの端を左足で押さえ、もう一方の端を右手で引っ張って首を絞め続けた。被害者は意識を失っていたが、確実に殺すため、電気コードを首に巻きつけて端を左足で押さえ、もう一方の端を両手で引っ張るなどして首を絞め続けた。その結果、被害者は窒息死した。被告が被害者の首を絞めていたのは計20分ほどだった。
 被告は指紋が残っても、前科がないため自分が犯人だと発覚するはずはないと安心していた。
■犯行後の状況
 被告は被害者の遺体をその場に残したまま被害者宅を離れ、貴金属買取店で盗んだ16点の貴金属を売って14万1896円を手に入れた。また殺害に使ったコードやタオルを捨て、帰宅した。
 被告は翌8日には手に入れた金で安全靴などを買い、借金の返済のための振込をした後、パチンコに行って約2万円負けた。
 被害者の遺体は9日に発見され、その当日、被告は顔見知りから、近所の人はすべて指紋を採られるとの噂を聞き、自分が犯人だと分かってしまうと不安を感じるようになった。その夜、どこかに逃げよう、逃げ切れなければ自殺しようと自宅を出て、大阪の兄のところに寄った後、11日には富山県の黒部に行った。被告は自宅を出た後、電話で同僚の男性らに犯行を打ち明けたが、自首する気にはなれず、11日、黒部駅で警察官に発見され逮捕された。
■考慮すべき事情
 検察官は、量刑を判断するうえで重要と思われる以下の事実を立証する。
 ①犯行が執拗で残忍なものであること②被害者が死亡し、結果が重大であること③犯行の経緯や動機に同情すべき点がないこと④遺族が厳しい処罰を希望していること⑤犯行後の被告の行動が悪いこと

 

 

☆☆弁 護 側 冒 頭 陳 述 要 旨☆☆
■はじめに
 本件は途方に暮れて生まれて初めて空き巣に入った被告が、被害者に見つかって頭が混乱する中、突発的に首を絞めてしまい、取り返しのつかない結果を引き起こしてしまった事件だ。被害者のご冥福を祈りたい。
 事実関係に争いはなく、被告も認めている。しかし検察官の主張だけがすべてではなく、弁護人としては、陰に隠れているところに光を当てていきたい。
■争点
 本件の争点は量刑となる。強盗殺人罪の法定刑は死刑または無期懲役だが、酌量減軽で7~30年の有期懲役とすることもできる。
 強盗殺人罪といっても、犯行の計画性の強さや被害者の数、凶器の種類など千差万別である。弁護人としては、今回の事件で死刑や無期懲役は重すぎるのではないかと考える。
■被告の半生
 被告は当時の和歌山県中辺路町で生まれ、中学卒業後、ずっとまじめにこつこつと働いてきた。今回が初めての犯罪だ。
 気が小さくおとなしい性格で、けんかをすることもない。要領が悪く、どちらかといえばお人好しだ。
 趣味のひとつがパチンコで、事件直前には無軌道にお金を使った。しかし消費者金融2社からの借金は亡くなった兄の葬儀のためにしたもので、1件はいわゆる過払いの状態にある。もう1件もここ何年も支払いの請求がない状態だったが、被告は払わねばならないと考えていた。
■犯行の背景
 被告はもともと雇用保険もなく、保障のない不安定な生活を送ってきた。そこに仕事がなくなったのは、現場監督と親方がけんかしたからで、被告の責任ではない。生活の歯車が狂った被告はハローワークにも足を運んだが、仕事は見つからなかった。
 今後の生活に不安を抱いた被告は、つい悪い考えが頭に浮かんでしまった。何度か被害者宅の玄関に手をかけたが、鍵がかかっていた。しかしどんどん不安が増し、パチンコでお金を増やそうとしたが、5月7日までの間負け続けて数十円になってしまった。
■本件犯行
 非行はもともと空き巣だけのつもりだった。顔を隠すための覆面や指紋がつかないための手袋も準備していない。
 しかし予想外に被害者が帰宅し、被告は激しく動揺し、混乱して頭の中が真っ白になってしまう。そして被害者を殺すしかないとの浅はかな思いに支配されて、とっさに家の中にあったタオルを手にしてしまった。
■犯行後の行動
 被告は事件の2日後の5月9日、テレビで見た映画に殺人のシーンが出てきて、あらためてえらいことをしたと思い、罪の意識と強い後悔を抱いた。そして、両親の墓の前で涙を流しながら事件を告白した。
 自殺することを決意し、まず大阪の西成に住んでいる兄に犯行を告白し、続いて電話で同僚の男性にも犯行を告白した。自殺しようと、以前に仕事で行ったことがある富山県の黒部に向かった。その途中で同僚の男性に電話したことから、黒部で警察官に発見され、素直に逮捕に応じた。被告そのとき、むしろほっとした気分だった。
■逮捕後の被告
 被告は真剣に反省し、毎朝毎晩、被害者のご冥福を祈っている。反省の日記や謝罪の手紙も書いた。
■今後の立証
 弁護人は、酌量すべき事情として以下の事実を立証する。
 ①強盗の計画性は全くなく、激しい動揺と混乱の中、突発的に殺意が生じたこと②被告は気が小さく、要領が悪い性格だが、犯罪とは無縁で、こつこつとまじめに働いてきたこと③仕事がなくなった後も、なんとか仕事を探そうと努力していたこと④犯行を深く後悔し、反省していること

 

 

     ◇
 この事件であなたが裁判員ならどのような判決を選ぶか、ご意見を募集します。日の結審後、Eメール(anatamo@sankei-net.co.jp)、またはFAX(06・6633・1940)にお寄せください。


 

 

 

 

 毎度毎度の繰り返しですが、「あなたの判決」

 

      anatamo@sankei-net.co.jp

 

までお待ちしております。

 


 では、またあした。

 

 

 

 


 

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告知・「あなたも裁判員」和歌山編 ニュース記事に関連したブログ

2009/09/12 22:50

 

ありゃりゃ。

 


 前回の更新で〝転載〟した山口地裁の裁判員経験者のみなさんの会見詳報、MSN産経ニュースやイザ!にはアップされてないですね。
 思うに出稿したのが日付をまたいで午前1時ごろだったもんですから、担当者がアップをやめちゃったんでしょう。図らずも弊ブログの独自コンテンツとなってしまいました。ネットには紙面と違って締切がないようで、実は違うんですな。とほほ。

 


 それはさておき。あす13日夜からフクトミ、和歌山へ出張いたします。14日から和歌山地裁で始まる強盗殺人事件の裁判員裁判のためです。きょうは泊まり明けだから、17日までの12日間で、自宅で眠れるのは今夜も含めて2回だけだあ。
 で、あす13日の朝刊(大阪本社発行版)には、以下のような記事を出しました。

 

 

 


【法廷中継 あなたも裁判員
最も厳しい求刑か
      あすから和歌山で初の強殺審理

 

 裁判員裁判で初めてとなる強盗殺人事件の初公判が14日午後、和歌山地裁で開かれる。弁護側は起訴内容を認める方針で、量刑が焦点。強盗殺人罪の法定刑は死刑または無期懲役と極めて重く、これまでの裁判員裁判で最も厳しい求刑となる可能性が高い。
 審理の対象は、強盗殺人と住居侵入の罪で起訴された無職、赤松宗弘被告(55)。起訴状によると、赤松被告は5月7日午後、和歌山市六十谷(むそた)の隣人宅に侵入しネックレスなど約29万円相当を盗んだが、帰宅した女性=当時(68)=に発見され、首をタオルなどで絞めて殺害したとされる。
 公判は被害者のめいら3人の証人尋問や被告人質問などを経て、15日に結審。判決は16日午後に言い渡される。
 週内には他に4件の裁判員裁判が行われる予定。千葉地裁の強盗致傷事件(14~18日)では、弁護側は窃盗と傷害罪にとどまると主張する方針で、裁判員裁判で初めて罪名が争われるケースとなる。津地裁の強盗致傷事件(15~18日)、高松地裁の放火事件(15~17日)はそれぞれ東海地方、四国で初の裁判員裁判。福岡地裁の殺人事件(15~18日)は同地裁で2件目の裁判員裁判となる。
          ◇
 和歌山地裁の事件であなたが裁判員ならどのような判決を選ぶか、ご意見を募集します。3日の結審後、Eメール(anatamo@sankei-net.co.jp)、またはFAX(06・6633・1940)にお寄せください。


 

 

 

 予告通り、古巣の和歌山からお届けします、「法廷中継 あなたも裁判員。傍聴旅ガラス状態です。好きでやってるんですから文句はありませんが、ちょっと疲れが抜けません。

 


 もうちょっと詳しい審理予定を書いておきましょう。

 

   14日(月) 罪状認否、検察側・弁護側双方の冒頭陳述、証人尋問(被告の知人)
   15日(火) 証人尋問(被害者のめい、被告の知人)、被告人質問、論告、最終弁論
   16日(水) 判決宣告

 

…となってます。

 

 紙面(大阪本社発行版)とMSN産経ニュース、イザ!には同じ「法廷中継 あなたも裁判員の記事が掲載される予定です。で、弊ブログでは多少、時間は遅くなりますが(日付はまたぐだろうなあ)、より詳しい情報をアップしていこうと考えています。あ、体力が許す限りですよ。

 

 ま、14日には大阪地裁で個室ビデオ店放火事件の初公判も開かれるんですがね。こちらは裁判員裁判じゃないですが、傍聴してみたかったけどなあ。

 


 では、15日以降、「あなたの判決」

 

   anatamo@sankei-net.co.jp

 

までお寄せ下さい。

 

 

 

 

 

 

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